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[コメント] わかれ雲(1951/日)

山梨県の小淵沢駅。汽車が一時停車し、女子大生5人が降り立つ。主人公は、沢村契恵子という人。この時点では、なんか愛想の悪いキャラ造型だ。
ゑぎ

 あとの4人は、後々まで映画演劇界で活躍する面々で、皆とても若くて初々しい。すなわち、大塚道子岩崎加根子宮崎恭子関弘子。中では大塚がリーダ的存在だ。先に全般的感想を書いておくと、序盤中盤は、ちょっと主演女優に難があるなぁと思い続けることになってしまい、後半かなり挽回するが、それでも、これが別の女優なら、という詮無いことを思ってしまう作品だ。

 さて、5人の女子大生は、汽車の発車まで時間があるので、皆で駅前を散策する。露天商の並べている商品(ブドウや焼き栗、民芸品など)を見て、いかにも都会人らしいセリフを云い合う(ちょっと上から目線)。そうこうするうちに、沢村契恵子が、発熱して倒れるのだ。それを見ていた地元の女性が、旅館へ案内する。これが、この旅館の女中で川崎弘子。もう一人の主役というべき役割を担う。

 呼ばれた医師は沼田曜一。沢村は肺炎と分かり、10日ほど休養が必要と云われるが、川崎が世話をすると云うので、大塚ら他の女子たちは、旅を続けることになる(彼女らの旅行の様子も、この後、2回ほど短く挿入される)。というワケで、この映画は、沢村が小淵沢の旅館に滞在している期間中に出会う人々、出来事を描いた作品なのだ。

 もう少し登場人物を記述すると、旅館の女将が岡村文子で旦那は中村是好。二人の娘が倉田マユミ。岡村は倉田にママと呼ばせるが、それが、品のあることだと勘違いしている。旅館の他の女中には、谷間小百合田中筆子がおり、田中は、「おさすり様」という怪しい民間療法(民間信仰)の免状を持っていると云う。あと、冒頭からラストまで要所で絡む駅前の写真屋として柳谷寛。沢村を見て、モナ・リザのようと云い、写真を撮りたがる。最後まで撮れないが、エンディング辺りで撮らせてあげれば良かったのに、と私は思った。

 沢村は、マイ銀の匙を持ち歩いているお嬢さんだが、「わがままで、天邪鬼で、神経質」と自己分析するぐらいで、自分を変えたいと思っているのだ。倒れて間もなく、東京で一緒に暮らしている若い義母(父親の後添え)−福田妙子が迎えに来るが、冷たい態度しかとることができない。そんな彼女も、川崎には素直に甘えるようになる。沢村が逗留している二階の部屋は、窓から汽車が走るのを見ることができる良いロケーションだ。二階の窓外からのカットは、どこにカメラを置いているのだろう。向かいの家からか?クレーンか?ダイナミックな切り返しがある。

 中盤、ずいぶんと快復した沢村は、沼田医師の巡回先である山奥の村の分教場へ勝手に訪れ、沼田を手伝う。分教場の先生は稲葉義男。夜はヤマメを食べ、3人で一緒の部屋に泊まることに(もちろん、お行儀よく寝るだけ)。翌朝、早く起きている沢村。庭で歌を唄い出す沼田。この辺りになると、沢村は見違えたように明るくなる。さらに、彼女の父親−三津田健が来ると、めちゃくちゃ嬉しそうで、前半の陰気なキャラとの、このギャップには堪らないものがある。三津田と沢村が、池のある白樺林で会話するシーンがいい。こゝも、唐突な池側からの固定ショットの切り返しがあり、驚かされる。

 ラストは、駅での別れのシーンだが、こゝで、銀の匙をからめた、ちょっと、オー・ヘンリーみたいな凝った小ネタのひねりを見せる。見送る沼田と川崎。見送ったあと、雲を見る。とても綺麗なかたちで、タイトルが画面に実装されるエンディングだと思う。

(評価:★3)

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