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[コメント] 或る夜ふたたび(1956/日)

失業者佐野周二の屈託と謎の乙羽信子で序中盤はひたすら面白いのに終盤失速。不快な風俗記録に終わった。五所作品には当時の常識の差別が何本かあり、鑑賞機会が少ないのもむべなるかな。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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佐野周二は38歳、妻の乙羽信子は12歳年下。佐野の失業話は興味深い。勤めのパチンコ屋が倒産(自動台が普及して淘汰されている)、失業者は800万人もいると云っている。混雑する失対に通い、事務職がご希望の職種がありましたちょっと遠いです北海道、断るとではまた来てくださいと次の客に席譲らされる。失対で一緒に並ぶ元上司中村是好は女房に逃げられて「仕事のない人間なんて紙屑同然」と嘆くダメ親父振りが心に沁みる。

彼等の住まいは木造平屋建てが整然と並んでいる。藤ヶ丘住宅街と看板が立っている。現在の横浜の藤が丘は高級住宅地らしいが、関連は不明。隣人の初井に留守宅の鍵預け、佐野のコートを仕立て、洗濯代を徴収している。近所の多々良純は保険の外交員。乙羽は夫の失業には楽観的で、ただ夫を愛することに専心している。退職金3万から1万かけてコートを仕立てたりする。時間があるうちにと金欠なのに鬼怒川温泉へ新婚旅行を決行。若い乙羽は何しても不思議なほど愛想がよく、佐野はずっと不思議がっているこの宙ぶらりんの時間帯がとてもいい。

乙羽は旅館の仲居の仕事に復帰する。税務署からの電話取ってさっそく主人の居留守を使うといういいギャグがあった。旅館へ泊まり込みに去るバス停で互いに振り向き合ういい件がある。旅館では千石規子さんが安定のグウタラ芸。若山セツ子も眼鏡かけて仲居さん。佐野の妹の野添ひとみは見合いから逃げて関西から上京して「アルバイトサロン」で働きはじめ、恋人の看病。恋人の同居人が小沢昭一でモテずにスネるがり勉君、すでに得意の役回りでハマっている。

乙羽は佐野に子供断られて失踪して中絶までする。そして昔の生活から逃げて佐野に匿ってもらっていたと徐々に判明する。最後は乙羽が飛び込み自殺しかけて佐野が謝る。この終盤は時代の産物と割り引いたとしても不快で、評価はがくんと下がる。「狂人」と無理矢理結婚させられて失踪という乙羽の謎の種明かしは、相手の方への同情が湧いて来るわけで、現代の鑑賞には耐えられない。相手の母親の浦辺粂子は「血筋が絶えてしまう」などと一方的に語って憎々し気な造形だが、そうなった経緯も含めて可哀想である。「狂人」を捕まえて連れて帰るショットなど残酷、痴呆老人の徘徊の苦しみなど知らない時代の産物と思われた。

(評価:★3)

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