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[コメント] 喜劇 各駅停車(1965/日)

森繁のり平喜劇だが意外な燻し銀のタッチが珍しくも好ましく、いつもののり平の発狂を誘う受難も人間味が溢れている。岡田茉莉子は流石の好演、有田双美が可愛い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作は「機関士ナポレオンの退職」。誇り高き機関士森繁は山茶花究に慣例により依願退職勧められて国鉄に定年はないと突っぱねているが定年はなかったのだろうか。居酒屋で喧嘩したばかりの三木のり平と組まされ、のり平は山茶花に辞めるよう仕向けてくれと囁かれてその気になるが、次第に仲が解れて二人で素潜りするに至る。

森繁は昼は人力車曳き、夜は英語の勉強した。兄が死んで実家に戻された。機関士の試験、引揚組と1年交替でしか受けられなかったと語っている。昼休みふたりで取る小山の迫ったすり鉢型の河原がいいロケ。視力悪くなりサングラスしてラストランのクライマックスだが客観的に無茶だろう。泣きながらエンブレム叩いて汽車に別れを告げている。タイトルバックで機関車は新幹線の高架下を潜る。すでに機関車は世代交代のモチーフだった。

森繁の、妻乙羽信子と死んだ同僚の娘で居酒屋の女将岡田茉莉子の有りがちな両天秤はこんなもの森繁が好きな岡田という設定はファンサービス的だが岡田が上手いので気にならない。三人で行った温泉で森繁・のり平の唄う鉄道唱歌に「おし」と合いの手入れる男勝りがいい。居酒屋での嵐の夜に「地獄に落ちてもいいわ」と囁くも森繁は厭な予感がすると駅に駆けつけて転覆事故を知る。森繁は俺が乗れば良かったと後悔するのだった。事故後だが汽車は本物が横転している。

のり平のギャグは大きくふたつ。前半、助手の最中に下痢して各駅でトイレに駆け込み続け、ついには置いてきぼりを喰らう。焦ってショベルを釜に石炭と一緒に放り込むギャグが笑える。胃痙攣で入院していつも挨拶してくれる愛想のいい客だった有田双美が看護師で再会。毎日薬取りに行くというギャグもいい。なぜかラブレターが届き、気障な正装して待ち合わせの喫茶店へ行くとフィアンセを紹介されるという遣る瀬無いオチ。自殺しようと線路に横たわり、鉄橋を千鳥足で歩いて落ちる寸前のアクションが驚異的でこの鳥瞰が本作ベストショット。いつもののり平だが彼もまた燻し銀の造形が施されているのが珍しくて好ましかった。

(評価:★4)

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