[コメント] 偶然と想像(2021/日)
現実から大胆に飛躍する脚本を、役者たちのリアルと非リアルの境界を行き来するセリフ回しで制御して、濱口竜介は巧みに「映画としてのリアル」を創りだす。三人の女性が遭遇した「偶然」に端を発した「想像」はその後も謎となって私の想像力をかきたてる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
観終わって時間が経てば経つほど、私にはどこからどこまでが、彼女たちの「想像」だったのか分からなくなってきた。
〔ご注意〕以降、結末に関するネタバレがあります。本作を未見の方は読まないことをお勧めします。
■第1話「魔法(よりもっと不確か)」・・・芽衣子(古川琴音)の「想像」はどこから始まっていたのだろうか。レストランでつぐみ(玄理)と会っているときに“偶然”に窓の向こうを男(中島歩)が通りかかり三人は対峙することになる。あの対決自体が全部、芽衣子の妄想だったのではないのか、と私は想像してしまう。
■第2話「扉は開けたままで」・・・奈緒(森郁月)と教授(渋川清彦)の精神的な性的交感は“あのとき”に本当に成立したのだろうか。あれは、オープンな場で尊敬する教授に朗読を聴かせる自分自身に興奮を覚えた奈緒の妄想だったのでは。実は彼女のハニートラップは計画通り成功していたのでは、と私は想像してしまう。
■第3話「もう一度」・・・同窓会場で夏子(河井青葉)に声を掛けてくる女性がいる。彼女は夏子にずいぶん雰囲気が変ったと言い、閉会後去って行く夏子の後ろ姿をずっと見つめている。彼女こそがかつてのパートナーで、夏子はそれに気づかなかったのではないだろうか。別離の原因は夏子の方にあったのでは、と私は想像してしまう。
観終わったあと、いつまでもモヤモヤする厄介な映画だ。どうやら私は濱口竜介の術中にまんまとはまったようだ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。