[コメント] コーダ あいのうた(2021/米=仏=カナダ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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アカデミー賞ノミネート候補とも噂される本作。元々はフランスの『エール』のリメイクだということで、オリジナル版が好きで何度か鑑賞しているくらいなので、少し不安もありつつ鑑賞してきました。
タイトルの『CODA』は「聾唖の親を持つ子ども」のことを指す言葉のようで、本作の主人公ルビーは歌の才能を持ちながらも、自分以外の家族がみんな耳に障がいのある聾者であり、音大を目指すルビーの葛藤を描いた作品です。 と言っても本筋のストーリーはオリジナル版とほとんど変わらず、元々ストーリー自体は王道ですが元が良作であるのには変わりないので、本作も面白いことには変わりないかと思います。 ただ、リメイクされた本作の方が評価されているようで、実際自分もそう感じるのですが、オリジナル版と比較した観点で感じたことを書こうと思います。ネタバレ含みますのでご了承下さい。
まず、本作の一番わかりやすい変更点は酪農を営む一家から漁業を営む一家に変更された点で、オリジナル版ではこの設定がイマイチ活かされずに終わってしまっていましたが、本作は明確に漁業という設定であるための弊害が描かれていましたね。耳が聞こえないというハンディを際立たせる演出として素晴らしい改変ポイントだと思いました。 また、家族構成も変更されていて、弟が兄に変わっていましたね。実際にルビーが夢を追う上で、残された家族を支えることを考えると、地味ですが兄の方が説得力は生まれると思うのでここも良かったですね。
あとは歌のレベルは全体的に上がっています。主人公の歌唱力はルアンヌエメラも素晴らしかったので甲乙つけ難いですが、その他のキャストの歌唱シーンのレベルは高く、音楽映画としての完成度も高くなっていたかと。 ただ、クライマックスの曲に関しては『エール』の方は至高だと思っていて、彼女の心情を爆発させたような歌詞と歌声、メロディーが最高だったので、本作のそれも悪くはなかったのですが、その点では少し残念ではありました。 演技自体は本作のエミリア・ジョーンズの方が上手かったですね。エメラちゃんも素朴な感じで好きでしたが、演技から伝わる力はレベルが違いましたね。
トータルして見ると本作の方がレベルは全体的に上がっていたので、元々好きなストーリーであることを踏まえると文句なしに面白かったです。 合唱会での無音の演出。そこからの二人きりでの歌唱を経ての、手話熱唱。流れが最高ですからね。若干本作の方が丁寧な作りになっているため、無音の中で周囲の様子に気づく父親のシーンが良かったですね。本当にああいう世界で生きているわけですから、客観的に情報を得るしかないわけで、他のお客さんが笑みを浮かべたり涙を流したりする様を見て感じるものがあるのだろうなという説得力がありました。
元々本作の障がい者を悲観的に描き過ぎない所に好感が持てましたし、本作もその辺りが実に人間らしく描かれていたのが良かったです。本作はキャストを実際の聾者で揃えるというこだわりがあったそうで、そういうこだわりが功を奏した素晴らしいリメイク作品になっていました。
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