[コメント] 殺されたスチュワーデス 白か黒か(1959/日)
そして終盤(といっても、後半の三分の一ぐらい)、捜査・立件が行き詰ったあたりで、また唐突に時間が遡り、殺人事件の実録風シーケンスが繋がれる、という凝った構成を持つ。
序盤の刑事−笠智衆と、若手記者−田宮二郎のコンビによる、捜査探偵部分も活き活きとしていて面白かったが、モンテ・マリオ修道会という組織のダニエル修道士(イタリア人の設定?)が容疑者として浮かび上がり、警察署に呼ばれて事情聴取が行われる部分が、一番見応えがあったと思う。聴取は都合5回。根上淳がメインの聴取担当者で、横(サブ)には殿山泰司。笠智衆は大人しく書記に徹している。何がいいって、ノラリクラリ追及をかわそうとするダニエル修道士に対して、殿山泰司が終始イライラしているのがいいのだ。また、修道会側には、ダニエル修道士とともに、十朱久雄演じる幹部修道士と、弁護士の織田政雄が後ろに控えており、この二人のレスポンスも面白い。特に十朱がよく似合っている。
ただし、田宮の情報源となる(ダニエル修道士と被害者の関係を知っている)、モンテ・マリオ書店員−左幸子の描き方が中途半端だったり、田宮の恋人−山田百合子に関する描写や、中禅寺湖の畔で田宮が泣き叫ぶ演出などは、やり過ぎで嫌らしく、ちょっと興覚めだった。
後半の実録風パートの主人公は、ダニエル修道士と共に、被害者の久保菜穂子と云っていいだろう。ダニエルは、ミサの後、こそこそと車で外出し、山道で服を着替え、駅(日光駅?)で久保と落ち合う。東照宮などのデート場面を経て、山の方へ。二人は湖畔のロッジを予約しており、入るなり抱き合う。こゝで、ちゃんと久保はスリップ姿を披露し、場面を盛り上げるのだ。一方、ダニエルの好色ぶりもとてもいい。また、ダニエルは教会の仕事がまだ残っていて、ロッジから、教会(鹿沼にある)を往復し、夜戻って来る、というような描写もある。実にセワしない逢瀬なのだ。さらに、久保が、自分たちの関係を管区長様に打ち明けて欲しい、と強く迫ると、昔なら火あぶりです、と頭を抱える反応なんて、徹底したダメ男ぶりで愉快になってしまうのだ。この容赦ない人物造型とその帰結の提示については、作り手の恐るべき図太さを感じる。なので、なおさら、エンディング近くにもフラッシュバックで出て来る、田宮の絶叫カットといった、嫌らしい部分をオミットできていれば、と思う。
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