[コメント] 殺されたスチュワーデス 白か黒か(1959/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
熱心な信者久保菜穂子の水死体が中禅寺湖(実際は杉並区の善福寺川)に上がり、精液も検出される。彼女の部屋には修道士ベルナール・ヴァーレの手紙。彼は突けば専門書店の店員左幸子との関係も浮かび上がり、いかにも怪しい。しかしさらに怪しいのが教会で、刑事に会せようとせず、やっと始まる事情聴取は十朱久雄の管区長と織田政雄の弁護士が横から茶々入れ続け、弁護士との打ち合わせだけで午前中使っちゃうとか、質問によって打ち切るとか、精神的な拷問だと割って入るとか、不倫はまず教会で裁かれると開き直るとか、刑事の殿山泰司がキレるとか。
しかしまあ、これらは警察目線が一方的という印象もあり盛り上がらない。「最近は人権尊重とか国際関係とかうるさい」と刑事の笠智衆がボヤく件があるが、昔の警察の密室体質もまた問題だったのだから。リアルな事件でも遠藤周作や田中澄江らが神父捜査を批判している(一方、松本清張は映画と同じ趣旨で小説にしている)。なお、新聞よりテレビが先にすっぱ抜く件があるが、実際にもNHKが極秘操作をすっぱ抜いた由(Wiki)。
物証はなく警察は手出しできず、ヴァ―レは突然帰国。目撃証言掴んだときにはゲームセット、相手は世界的な修道会だよと諦めざるを得ず。事件を追う在宇都宮、田宮二郎の記者と笠の刑事は憤懣やるかたないという収束。彼等の活躍は並以上のものではない。笠は自宅で焼酎呑んでいて、田宮にも薦めると、笠の娘が焼酎なんて記者さんには駄目よと云う件が印象的。
後半30分は映倫にカットされた由。ここでは久保とヴァーレの逢引きから殺人に至る様子が描写されている。神父は教会抜け出して着替えてドライブ、湖畔にコテージ借りて逢瀬を重ね、「週道士様」「ダンさんと呼びなさい」「聖職者は結婚できない」「結婚は嘘だったの」「昔は破れば火あぶり、恐ろしい裁きがあります」「二人の愛が神の御心に叶うよう祈りましょう」などと議論の末、久保は逃げ出しヴァ―レは殺害してしまい泣いて湖に祈る。キリスト像は血を流し、彼は聖職をはく奪されて十朱に掌を十字に切られている。事件の断定は置いておいても、こういう怪しい描写は関係者を怒らせただろう。冒頭にフィクションと断り書きがある。文芸協会作品。16?からのブルーレイ化ディスクで鑑賞。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。