[コメント] 市街(1931/米)
『犯罪王リコ』や『民衆の敵』とほゞ同時期の犯罪映画だが、本作はこれらに比べると幾分甘い、メロドラマ要素の多い作品だ。まだまだサイレントっぽいセットやメイクといった部分では、これら3作とも共通している。
カーニバルの射的場の助手として登場するゲイリー・クーパーは、白塗りのサイレント風メイクなのだ。メロドラマ要素というのは、クーパーとヒロインのシルヴィア・シドニーとの恋愛描写を指しているのだが、最初の浜辺でのラブシーンが、とびっきり美しい撮影で、リー・ガームスらしい柔らかな光の扱いに目が奪われる。訳あって刑務所に収容されたシドニーと、面会に来たクーパーの、金網越しのキスも、今となってはありきたりな感もあるが、胸を打つ演出だ。後半も、出所したシドニーに対して、ボスのポール・ルーカスが横恋慕し、クーパーが対立していく、といった、あくまでも男女関係をテコにして話を運ぶのだ。しかし、本作のポール・ルーカスの大物ぶり、その貫録は見事だ。シドニーを自分の物にしようとする執拗さ、横暴ぶりが実に憎々しくていい。
ただし、本作の一番瞠目するシーンは矢張り、クライマックスのカーアクションだろう。チェイスではなく、クーパーとシドニーと、二人を始末しようと企んでいるギャング達が同乗する自動車、その猛スピードでの走行シーンなのだが、なんと汽車との並走カットがあり、上手くスリルを造型している。
#柱時計を映し、時計の針を高速回転させて時間経過を表現するカットがある。
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