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[コメント] 星のない男(1955/米)

キング・ヴィダーの西部劇としては偏執さが希薄ではあるが、娯楽作ということでは、第一級の作品だ。ラッセル・メティのカメラは全編落ち着いた色調で、ダグラス・サークとの仕事と同様の色遣い。
ゑぎ

 カメラポジションも自在かつ構図は安定しており、全く落ち着いて見ていられる。カウボーイ仕事の場面は、あまり雄大さは感じられないのだが、手堅い画面造型だ。

 見せ場は沢山あるが、やはり、カーク・ダグラスウィリアム・キャンベルに銃の扱いを教える場面での、ダグラスのガンさばきを第一にあげるべきだろう。こんなことができても、何にもならないと云いながら披露するところが、ダグラスらしい嫌らしさでいい。

 重要な役柄の女優は3人出て来て、どれもヒロインらしくはないが、三様に明確に描き分けられており、本作の厚みのある面白さに繋がっている。キャンベルの相手役で清楚なマーナ・ハンセンは、登場場面ではもっと大事に扱われるのかと思ったのだが、ラスト近くまで再登場しない役でちょっと可哀想。クレア・トレバーは『駅馬車』から15年後ぐらいだが、まだ、スカートをめくってガーターベルトを見せ、ストッキングに挿んだ札を取る、という場面が用意されている酒場女。そして牧場の新オーナーとして勿体ぶって登場するのがジーン・クレイン。これは何を考えているのかよく分からないキャラクターだが、強い造型ということでは一貫しており、プロットに複数の対立構造を生み出していく梃子(てこ)になる良い役だ。トレバーとクレインは対照的な性格付けだが、いずれも大人の女の魅力を体現して本作の娯楽性に貢献する。また、悪役リチャード・ブーンがいつもながらの存在感。これも明記すべきだろう。

(評価:★3)

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