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[コメント] カモン カモン(2021/米)

母親に厚遇された兄と疎まれた妹。その妹は心を病む夫の妻であり、息子を無条件に受け入れる母でもある。妹は兄と老母の関係に苛立ち、その激情に戸惑う兄はパートナーとの関係に結論が出せない男でもある。そんな夫でも父でもない男が伯父として妹の息子と対峙する。
ぽんしゅう

一人ひとりが抱える“わだかまり”は互いに複層し絡まり合っているのだが、マイク・ミルズは彼らの「心の問題」について決して語り過ぎない。この伯父(ホアキン・フェニックス)と甥(ウディ・ノーマン)の旅の物語は、そんな“わだかまり”の気配のなかをフワフワと進む。この「旅の物語」はラジオ・ジャーナリストである伯父が、全米各地の子供たちを巡って「未来について」問いかける旅であり、甥の取り留めのない問いかけに伯父が応え続ける「質問の旅」の物語でもある。

一般的に子供たちが大人に投げかける質問は、自分たちが「未来=大人の世界」を生きる知恵と力をつけるための情報収集だ。一方、大人が子供たちに「未来」について質問したがるのは、現在の自分たちの世界に自信が持てない証しなのかもしれない。

質問は、するより、されるほうが気づきや学びが多い。他者からの「あなたは・・・」という質問にさらされると、否が応でも自分を客観的に見つめるとになるからだ。互いに「あなたは・・・」「どうして・・・」と問いかけ合いながら、ひたすら前へ前へ(カモンカモン)と進めばいい。そうすれば、おのずと進む道(未来)は見えてくるはずだ。質問とは互いへの思いやりで、コミュニケーションの原点だがら。

そんなマイク・ミルズの提言はシンプルだが力強い。

(評価:★4)

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