[コメント] 選ばなかったみち(2020/英=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
実はたった一日の物語です。父=ハビエル・バルデムは、現実世界に身を置きながら、2つのパラレルワールドを行き来します。決して純粋な「回想」ではありません。今の姿のまま別世界と行き来している。それは彼の過去の体験に基づいた「パラレル・ワールド」です。「潜在意識」と言ってもいいかもしれません。
彼の潜在意識に根深くあるのは、どうやら「後悔」のようです。「選ばなかったみち」と言い換えてもいい。
一つの世界は、故郷メキシコ。息子を失った場所。おそらく家庭も捨てて、二度と戻らなかった故郷。「帰る」というみちを「選ばなかった」場所。
もう一つの世界は旅先のギリシア。ここで彼は、若い女の子の尻を追いかけて、「家庭と娘から逃げてきた」と言います。現実世界のエル・ファニングは「あの時は気が変わってすぐ帰ってきたじゃない」と言っていますが、実際、離婚してますし、彼の心の中では既に家族を捨てていたのでしょう。そんなハビエル・バルデムは、パラレルワールド内で死に、現実世界で娘の名を呼ぶ(思い出す/認識する)わけです。つまり、この世界での彼の「後悔」は、家族を捨てたこと。家族の元に「帰る」というみちを選ばなかった。
映画は、娘の「選択肢」を暗示して終わります。どちらを選択しても、もう一方は「選ばなかったみち」として、いずれ彼女の「後悔」になることでしょう。
最後に「捧ぐ」と名前が出てきますが、サリー・ポッターの弟が若年性認知症を患った経験から生まれた映画だそうです。もしかすると、この映画自体が彼女の「後悔」から生まれた作品なのかもしれません。「あの時こうしていれば」というサリー・ポッター自身の「選ばなかったみち」。
『ノーカントリー』の殺し屋と『パーティで女の子に話しかけるには』の宇宙人が父娘なんてヘンテコ映画に違いないという誤った認識で観に行ったら、予想外に重たい映画でした。
(2022.02.27 アップリンク吉祥寺にて鑑賞)
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