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[コメント] 夜を走る(2021/日)

金属スクラップ加工処理を行う零細企業(工場)に勤める二人の男、足立智充玉置玲央が、ほゞ同じ比重で描かれるが、矢張り足立が主人公と云っていいだろう。彼が、とんでもない不条理な世界へ導いてくれるのだから。玉置は足立の幇助者に過ぎない。
ゑぎ

 前半は足立と玉置のこの工場内での位置づけや、家庭生活が淡々と描かれて、二人、及び他の社員との関係性が示される部分だが、このスクラップセンター内のショットが悉くいい。圧縮プレス機の動作、あるいは金属切断機による火花のショット。凄い迫力の画面だし、面白いなぁとずっと思いながら見る。

 これが、取引先の女性の新人営業員−玉井らんが登場し、足立と玉置と3人で飲むことになった夜の場面から、映画がギアシフトし、一気にクライムムービーになる。さらに、なんやかんやあった後、彼女のスマホに着信があり、足立が電話に出る場面から、ひどい不条理劇に突入するという、ちょっと想像を絶する展開が待っているのだ。

 足立はニューライフデザイン研究所という名前の新興宗教の建物に導かれる。こゝで出て来る所長−宇野祥平の造型がいい。宇野は、登場間もなく、テレポーテーション(瞬間移動)するのだ。終盤に足立が見せる、まったく常軌を逸した身体の動き(一応ダンスと云っていのだろう)も、宇野に操られていたのだろうか。とにかく突出した場面になっている。惜しむらくは、このようなぶっとんだシーンを、もう一つ二つ連打して終わることができれば良かったのにと感じられたところか。教団(研究所)のその後(ファシリテートするオフの声)も、家庭生活が淡々と続く帰結も、その見せ方はイマイチ物足りなさが残ってしまった。

 尚、特殊廃棄物処理の件でスクラップ工場に来る松重豊が良い出来だ。ベンツから降りてくるショットが、露出アンダーでシルエットのようになっていて、とてもカッコ良かった。

(評価:★3)

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