[コメント] 逆流(1924/日)
最初のカットは武家屋敷か寺社の塀の横を歩く三樹三郎−阪東妻三郎。その横移動ショット。道行く人とすれ違う。登場から弱々しいというか、なよなよしていると感じる。カットを変えて、塀に立小便をする男。次に女性2人とすれ違う。一人がヒロインの操で、まだ17歳頃のマキノ輝子。阪妻との会話シーンになるが、こゝで切り返しっぽい阪妻のウエストショットの繋ぎがある。
次に三樹三郎−阪妻の母が寺に参る場面。続けて街道を後退移動するショット。乗馬3騎が駈ける。歩く人々が駈ける乗馬を避ける。老婆が蹴られた、との騒ぎになり、これが三樹三郎の母なのだが、偶然近くにいた三樹三郎がすぐに来るという展開。どうも蹴った乗馬は敵役の源三郎−片岡紅三郎だったようだが、現存版ではその点が良く分からない。しかし、騎馬の疾駆ショットはよく撮れている。乗馬したまゝ川を渡るショットもある。
唐突に操と源三郎がイチャつくショットにディゾルブして阪妻。垣根の隙から2人を見る三樹三郎。手前に三樹三郎の後ろ姿、画面奥に池の前の操と源三郎を映した縦構図ショットで、ちょっとピント送りをするフォーカスの演出があるのには驚いた。
道場。うつろな三樹三郎。そこに姉が来る。横に並べた会話シーン。こういう場面では切り返しは選択されない。姉は源三郎に凌辱されたと云う。この現存版の残念な点は、敵役・源三郎の悪事の場面がちゃんと示されない、科白(挿入字幕)でしか説明されない点だ。そこが多分、欠落しているのだろうが、いや、もしかすると源三郎のシーンをオミットしたダイジェスト版が現存版なのか。
さて、続いて操と源三郎の祝言の場面になり、これに走る三樹三郎がクロスカッティングされる。宴で踊る男。三樹三郎は屋敷(婚礼会場だろう)に着くが、中間(ちゅうげん)たちともめ、喧嘩になる。10人ぐらいを相手に一人で闘う三樹三郎が強いことは分かる。しかし、最後は屋敷を放り出されたということだろう。
「かくて7年」と字幕が入り、松のある道。海が見える。尾羽うち枯らして、昼間っから酔っぱらってふらつく三樹三郎。童子2人にからかわれる。こゝでも切り返しっぽい繋ぎがある。そこに船に乗った源三郎と操が登場する。海をバックにして、浜に立つ源三郎と操を含む人たちのショットがいい。三樹三郎が近づいて行く。こゝも切り返しっぽい。殺陣シーンになると、ずっとロングショットだ。しかし、これがなんという結末。いやはやこのラストショットには震慄させられた。それは、源三郎の場面が多く欠落している所為もあるように思う。
#ヒロインのマキノ輝子は後のマキノ智子。牧野省三の娘で、マキノ雅弘のお姉さん。後に澤村國太郎の妻となり、長門裕之・津川雅彦の母となる。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。