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[コメント] ダムネーション/天罰(1988/ハンガリー)

ファーストカットは貨物用のロープウェイの画面で壮観。カメラがゆっくり引くと、屋内の窓越しに撮ったカットだと分かる。引いた後、横移動して屋内を見せる。
ゑぎ

 この冒頭と同じような、ゆったりとしたドリー後退移動や横移動、パンニングなどを行い、オフ画面の被写体を暴露させていく演出が基調になっている。ただし、私には、あっと驚くカットは少なかった。例えばアンゲロプロスのシーケンスショットのような、ワンカット内で複数の出来事を生起させ、それぞれ異なる感情を定着させていくような、そんな試みはほとんどない。簡単に云うと、オフの被写体が現れても、それがどうしたの?と云いたくなるようなカットが多いと私には思えた。

 ただし、雰囲気のあるシーンの連続なので、そこを気に入る観客が多いことも了解できる。例えば、雨と靄の中の野良犬のロングショットが多数あり、殺伐とした空気が醸成される。タイタニックバーという酒場の内外の造型も良い雰囲気で、歌を唄う女への寄りは、ズームも使っていると思うが、グッとくるカットだ。バーにはビリヤード台があり、アコーディオン奏者が同じフレーズを弾き続ける音楽と、球を撞く音の反復が耳に残る。

 最も良いと思ったのは、ラスト近く、建物の二階の窓外から屋内を見せていたカメラがクレーン移動し、玄関前のドア外の二人の女性をとらえるシーケンスショットだ。この玄関と二人の女性は、中盤でも出て来たのだが(その時点では、街娼か?と思ったが)、このラスト近くのショットで、建物が何で、二人の女性が何者か、が合点される、上手い見せ方だと思った。また、その後の、トレイラー(予告編)でも採録されている、遠くから男が歩いて来て、犬に向かって吠え始め、犬に吠え勝つショットは、凄い雨降らしテクニックだと思いながら見た。確かに、このショットには震撼とするが、しかし、これが無いと、随分と満足感が下がる、脆弱な映画だとも思う。

(評価:★3)

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