[コメント] アウトサイダー(1981/ハンガリー)
向上心、目標、未来とは無縁。日々を享楽的に消化する労働者たち。なかでもバイオリン弾き(アンドラーシュ・サボー)のどうしようもなさは、倫理や制度で矯正できそうもなく、タル・ベーラはこの不適合ぶりを積極的に"自由”として容認している感がある。
その天然な無自覚ぶりに、私は寓話「アリとキリギリス」のキリギリスを思い出していた。だたし、このキリギリスはアリ(体制)の主張の欺瞞性に無自覚的にではあるが気づいており、その"天然な駄目ぶり”は確信犯的体制造反者のように見えた。撮影現場で直録りしたような演奏(音楽)のリアルさにも自由を希求する奔放な力を感じた。
ラストシークエンスで映画のトーンが一転する。ハンガリアン協奏曲の生演奏のなか、外国客ら(東ドイツだろうかチェコだろうか)と、なにやら意味ありげに会食する左翼エリートらしき男女たちが登場する。政治的なメッセージが込められているのだろうか。私には分からない。ハンガリーが共和国憲法を施行し一党独裁から多党制に移行するのは、本作公開から8年後だ。
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