[コメント] 空、見たか?(1972/日)
時間は唐突に飛び空間も移動する。自然体の行男(吉澤健)は性衝動を原動力に1960年代を彷徨って、ついに生きるためにエロスの原点へと至ったようだ。ラストシーケンス、段丘崖を背景に河原を素っ裸でうろつく男と女が、私には遥か原始の穴居人のように見えた。
そしてカメラはティルトアップして“空”を捉える。確かに空はすべての時間と空間に平等に存在し、そこで暮らす者たちのすべてを(おそらく)半永久的に包括する。
商品であるまえに作品を作るという古くて新しい志。映画の文法を無視した確信犯的蛮行と資金不足のチープさが話法の粗削りな魅力となって90分間あきさせなかった。そんな自主制作の鏡のような“裸の志”がまぶしい。社会派からピンク映画まで、当時の独立プロが直面した最大かつ究極の課題なのだろうが、21世紀の今だって真摯な映画青年ならこの「商品であるまえに作品たれ」という命題をまえにして悶々としていることだろう。
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