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[コメント] 次郎長外伝・秋葉の火祭り(1955/日)

秋葉山の秋葉権現。権現詣りの行列が続く土手の上の道。凄いエキストラの数だ。この冒頭のゴージャスなショットからマキノらしい。人々の中には、沢山の「講」の存在があり、森村講と名付けられた集団の一人が石松−森繁久彌だ。
ゑぎ

 他にも、山伏たちの中には、法印大五郎−田中春男や東山坊−清水元がおり、商人のような侠客の増川仙右衛門−本郷秀雄が絡んだりするが、プロットが動き出すのは、立派な灯籠を奉納するつもりでやって来た追分三五郎−三島耕とお嬢さんのお峰−桂典子が山道で盗賊−石黒達也に襲われたことからだ。そして、逃げたお峰を助けたヤクザ者が河津清三郎で、河津は馬子のお美代−北原三枝を雇ってお峰を乗せ、宿場町(坂下宿)を目指す。また、叩きのめされた三五郎−三島は、旅芸人一座(お時−利根はる恵が座長)に拾われるのだ。かくして、主要キャストは坂下宿に集まることになる。

 坂下宿は秋葉山の麓にある宿場で、三島雅夫が親分の黒駒一家が仕切っている。三五郎たちを襲った石黒も黒駒一家の一人なのだ。さらに、お美代−北原も黒駒の盃をもらいたい、と思っているという話が出るのだが、ほどなく、石黒と北原は兄妹だという設定も分かって来る。しかし、北原は純然たるヒロインだ。家にお峰−桂典子と河津を二人残して三五郎を捜すために外に出た北原が、妙にソワソワしてためらいながら家に戻るのは、口では、こんなヤツでも男には違いなんだから気を付けなよ、とお峰に云うためのように見せかけるが、実はすでに河津に惚れていた、ということだったのだろう。しかし、河津が風呂に入っている隙に、お峰は、石黒によって拉致されてしまう。ちなみに、河津が湯に浸かりながら「お富さん」を口ずさむのはチャカシの演出だろう(1954年に発表され大ヒットした歌なのだから)。

 そして、本作には二つのクライマックス、大立ち回りのシーンがあり、その一つ目が、黒駒−三島が親分衆を集めた宴会場面。利根らの踊りの余興のあと、今夜の賭場で一番儲けた親分へは褒美があると黒駒が云い、そこにお峰が連れ出される。こゝで河津が割って入って、やっと清水の次郎長と名乗り、立ち回りになるのだ。部屋の灯りが消えた中での、剣戟場面では、刀を合わせる際に火花が散るが、これもマキノらしい演出だ。また、ラストのもう一つの大立ち回りの前に、河津と北原との会話シーンがあり、河津が北原の兄貴(石黒)を斬らないといけない、と告げる場面も重要で、こゝは複雑なラブシーンでもあるのだ。しかし、北原の感情の表出は難しかったろうと思うが、マキノらしい濃密な女優へのディレクションによく応えている。クルリと振り返えらせる演出がいい。

 さて、もう一つの大立ち回りは、タイトルにある「秋葉の火祭り」の後の、大群衆の中での大喧嘩シーンだ。だが、チャンバラの前の、祭りの描写が、意外に冗長で、ちょっとテンションが下がってしまった。立ち回りには、黒駒のやり方に反発を感じていた、石松や法印大五郎らも参加して活躍する。しかし、石黒を斬るシーンが明確に示されないのも、イマイチではないか。ラストは次郎長に石松らがついて行く、という場面で、富士山が綺麗に見える風景でラストシーンをむかえる、というのがマキノらしい。

(評価:★3)

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