[コメント] 恋人はアンバー(2020/アイルランド)
演習地を行くエディを横目に見ながら、タイトルロールのアンバー−ローラ・ペティクルーが「バカみたい」とつぶやき通り過ぎる。続くエディやアンバーの周りの高校生たちの描写が、ちょっと極端で酷いのだ。もう考えていることが一つのように、そういう会話、しぐさばかりが切り取られる。ただし、これは徐々に慣れるということもあるし(こういう映画なのだと)、ちょっと見栄っ張りの部分やイイヤツな一面も見えて来て、男子で目立つケヴや、最初にエディとキスするトレイシー及びその女友達も可愛らしくなって来た。
また、男性性の象徴としての軍隊(及び軍事教練)の扱いは何か古臭い感覚も持つが(例えば、女子は教練に参加しないのか)、プロットのテコの役割としては十分に機能している部分だ。エディの部屋に軍服姿のデヴィッド・ニーヴンのポスターが複数あるのは(一枚は『天国への階段』)、ニーヴンにある種の象徴性があるのかと思いながら見た。チェストの上に大きな弾丸が立てて並べられているのは、間違いないだろう。
さて、アンバーの描き方については私は違和感を覚えながら見た。まず、この人の大きな声が耳障りだと思った。本作は、登場人物が絶叫演技をする場面の多い映画だと思うが(それ自体が私の好みではないが)、特にアンバーが怒鳴るシーンが多いのではないだろうか。あるいは、エディの自転車を止めるのに石を投げる(それも3回ある)というのもどうかと思った。私の見方にバイアスが掛かっているのかも知れないが、彼女を粗野に描き過ぎるのは、ある種のステレオタイプのようにも感じられたのだ。だから、ダブリンで知り合うドイツ語専攻の大学生サラ−ローリン・キャニーが清冽に感じられるという面があると思う。他にも、担任の男性教師の変化の描き方(彼も怒鳴る)もイヤだし、教練で助けてくれるキアンの役割も中途半端ではないか。
最後にもう少し良い点も書いておこう。まず、アイルランドらしい丘陵地の風景、エディがトレーニングする高台や、墓石だけポツポツとある墓地など、いい画になる。これらの背景の取入れは、この映画のストロングポイントだ。また、ダブリンのバーで、ドラァグ・クイーンの歌唱(口パク?)に見とれるエディの場面が、こゝだけ、現実離れしたファンタジックな画面作りになっており、リアルでないという見方もできるけれど、私はとてもいいと思った。
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