旅の途中で出会って、あんな非日常的な時間を過ごしたら、そりゃ恋にも落ちますって。そしてお互いに、もう二度と会わない……と私は思うのです。ふたりはそれぞれの国に帰ったら、友達やら家族やら勉強やら仕事やらの日常に飲み込まれてしまう……はずなんです。あの時間は人生のとある１ページにおさまり、思い出貯金箱にストックされていくんです。

だからこその、ラストの数分。ふたりで過ごした場所を、ただ映すだけ。あれがなかったら5点は差し上げません。過去の思い出の場所を、後から確認するために撮ったスナップのようじゃないですか。人はいない。風景だけ。非日常。過去のもの。でも僕はそこで、ある人とある時間を過ごした、こともあったんだ。

非日常的な時間、自分にとって特別だった時間ほど、思い出貯金箱に似合うものはありません。プルースト的過去憧憬までをも見た気がした映画でした。