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[コメント] ドリーム・ホース(2020/英)

「儲けじゃない、胸の高鳴りだ」と言う割に、映画の結論は勝利と利益に収束する。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2009年のウェルシュナショナルを勝って映画が終わってしまったので愕然とした。これはウェールズご当地版のグランドナショナルで、東海ダービーとか関東オークスみたいなもんだ。劇中で再現されたウェルシュナショナルがまたショボくてね、まるで田舎レースですわ。これなら中山大障害の方が面白いよ。

しかし現実のドリームアライアンスは翌2010年、モノホンの世界一の障害競走であるグランドナショナルに挑戦している。グランドナショナルは最大40頭立てで完走できる馬が半分以下という狂気のレースで、その過酷さは常軌を逸している。ドリームアライアンスは世界最高峰のレースに果敢に挑み、30個ある障害のうち24個目で(頑張ったなあ)鼻出血による無念の競走中止となった。

オレは映画を観る前から、当然グランドナショナルがクライマックスになることを疑っていなかった。それを観に行ったのだ。グランドナショナルは、ドリームアライアンスにとってのホセ・メンドーサ戦だからだ。それが地元のウェルシュナショナルで勝ったところで調子よく終わって、組合員の配当はひとりあたり1400ポンド(20万円ちょい)でした、よかったですねチャンチャンってお前はアホかボケか死ね死ね死んでしまえ。結局、この映画の作り手は勝利と収支にしか価値を見出していないのである。

映画最高の見せ場となったであろう大スペクタクルを捨てたのは、グランドナショナルを描くことが不可能だからだろう。落馬転倒、競走中止の死屍累々を映画のために再現すれば、必ず問題になるからだ。しかしそんな事情は知ったことではない。

たとえばドリームアライアンスを去勢する決断なんか現実には極めて重要な分岐点だったろうに、そもそも去勢の話すら出てこない。調子よく史実からおいしいとこだけつまんで一丁あがり。まるでアメリカ映画だ(イギリス映画です)。

(評価:★2)

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