[コメント] 安重根と伊藤博文(1979/朝鮮民主主義人民共和国)
判ったことは、安重根なる人物は朝鮮の大石内蔵助に過ぎないということ。一人一殺のテロリズムが歴史を変えるような時代はとうに終わっているというのに、彼という御輿を担ぎ出さねばならないのは、やはり国民受けする「義士」だからだ。
この映画の作者たちは、テロリストがどんなに頑張っても国のためには逆効果であることはもちろん判っている。「彼はやり方を誤った」とナレーションが語るとおり、三十数年恵まれた環境で勉強し、人に先生と敬われる人物(このあたりリアリズム描写か謎なのだが)が、最後の手段としてこんな幼稚な方法に出るのは、あまりに学問を無駄にし過ぎている。それでも彼を主役に据えるのは、ひとえに安が国民的人気のヒーローであり、倒される相手が悪名高い伊藤だから…要するに、勧善懲悪の通し狂言的出し物であるからだ。われわれは秀吉や伊藤博文が朝鮮でいかに憎まれているかあまり知らない。せいぜい天下統一の偉人か、また日本最初の首相という認識があるだけだ。だからこの映画を観て感じることは、昔の千円札がいかに朝鮮民族の逆鱗を逆撫でしたか、というくらいでいいのだろう。これは侵略について真面目に考える作品ではなく、単なる娯楽作品なのだから。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。