[コメント] 千羽づる(1989/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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入院している広島の赤十字病院は原爆症の患者が多かったのだろうか。大人たちは彼女に原爆症と伝えていない(薄々感づいている)のに、看護師の石野真子が原爆症の見舞いだと折り鶴を彼女に渡す。これはおかしいと思う(同室患者で結核の田山真美子には渡されていない)。終盤に篠田三郎の医師が、病気を知っているらしいから渡したのだというフォローが入るがこれもよく判らない。これは瑕疵だろう。鶴は長寿の鳥、千羽折ると長生きできると隣のベッドの結核少女に教わって鶴を折り始めている。結核はもう菌は出ないので同室でもうつらないと説明され、田山は退院する。不治の病と云われたのに治った、貴女も頑張りなさいと広瀬は励まされている。
倍賞は窓口の支払で請求額が高いのに驚き、事務員は注射液が2400円で12回注射していて、あとは輸血と入院費と説明している。「血液と注射の薬は高いだけじゃのうて、前金であらかじめ手ぇ回しておかんと手に入らんのじゃと」と亭主の前田吟に説明し、「いよいよとなったらこの家売りましょ」と切り出し、家族は小さな店舗に引っ越している。これが自助というものだろう。何も悪いことしていないのに。医師の篠田三郎が懐かしい。病状悪化の物語はこの医師が予告した通りに展開する。白血球が10万を超えると死ぬと云われる。体が動かないのにおまる使うの嫌がる広瀬を倍賞が便所へ連れて行く件に素晴らしいパッションがあった。
この小学校は年2回運動会があり、春の運動会のリレーに失敗したクラスが練習を重ねて秋の運動会にリベンジした、ということでいいのだろうか。潮干狩りした後に土手で練習するシルエットが私的ベストショット。この時代でも色彩調整というのか、渋い色彩が感じいい。広瀬は実際、足が速いのだろう。娘に晴れ着をつくってやるのが時代。患者を電話番に残して出かける石野真子の看護師はノンビリした時代を彷彿とさせる。最後に生徒たちの募金活動と少女像が映る。原作は「飛べ!千羽づる」。石野真子の「千羽づる」という唄が後テーマで使われる。
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