[コメント] オットーという男(2022/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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身につまされるところはある。子供のいない夫婦で、どちらかに先立たれたら(いつか必ずそうなる)あんな想いに襲われるだろうなとか。でも、だからといって死(自殺)に向かってまっしぐらみたいなことにはならない(と思う)。そこに、この映画を成立させるための大きな作為を感じてしまう。まあ、町のために悪態を吐きながらもゴミの分別をしてやる理屈っぽくて頑固なじいさんが、その強い意志で死(自殺)へと突き進んでいて、それには最愛の妻の死があって、てな背景が徐々に明らかになってくるという語り口の上手さは楽しめるから許容範囲なのだけど。
その伝で言うと、自殺に3回も4回も「失敗」するというのも段々しらけてくる。3回目と4回目は妨げる要因(展開)すら同じだった。こんなことここに書く必要もないが、縊死を成立させるのに必要な重さは、自分の体重の半分もあれば充分で、足が地についたままでも人は死ねるそうだ。映画を見た率直な感想だが、実際には、自殺志願者による自殺は、案外たやすく成立するのではないか。まあこれも、死にたくなるような喪失感にとらわれていたり、リアルに死の衝動で苛まれた経験のあるような人たちが観れば、共感できたり救いになったりするのだろう。今の僕をターゲットとした作品ではなかったということかと思う。
「雪かきがされていない」ことに気づいてオットー(トム・ハンクス)の身を案じたりなど、日常生活のこまこまとした事象が丁寧に観察され、それらを積み重ねることによって成立した作品。基本的には人生を見つめるしっとりと落ち着いた作品だったと思う。
アニータ(ファニタ・ジェニングス)とルーベン(ピーター・ローソン・ジョーンズ)の黒人夫妻の「バカ息子」が行ったきり帰ってこない就職先が日本。オットーが友人・ルーベンと最終的に決別した原因は、それまでフォード車に乗っていたルーベン(オットーの愛車はいつもシボレー=GM)がトヨタ車に乗り換えたから。こういうあからさまな差別意識が無造作に表出される箇所は問題だと思う。本作の主旨に照らしても疑問だ。抗議しておく。
(23/3/11劇場見)
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