[コメント] オーケストラの少女(1937/米)
ストーリーは常套的だし、テーマは研ぎ澄まされていないし、少女の最初の登場シーン含めて演出は大雑把だし、図らずも何人かの登場人物は戯画的ですらあるが、それでもこの映画は21世紀を生きながらえるたくましさを感じさせる。その源泉の力とは何だろうか。
少女の微熱を帯びたような眼差しの虜になったことがかつてあった。ディアナ・ダービンと同い年の頃だ。私は銀幕の中の少女に恋したのだろうか。そのとおりなのだが、それだけではなかったことに今気づいている。
この微熱感は少女の眼差しの属性ではなく、こうした楽天的映画を作り出しえた幸せな国アメリカのみ保有することのできた特権的属性なのだ。成功した国、第一の国になった国が放ちうる喜びに満ちた微熱感を幼い私はどこかで感じとっていたはずだ。微熱感の媒体の最たるものがディアナ・ダービンの瞳だったことは間違いないにしても、眼差しがある一点に向いてひたぶるに笑っている人達のたくさんの顔というモチーフの底知れない強さに決定的に撃たれていたことに、私は今ようやく気づいた。こういう顔を持った人達には勝てない。そのことを映画が出来て何十年も経った後に学ぶことの出来た私は映画愛好者冥利に尽きるというものだ。
照り輝く顔々に幸多かれ。この映画の中においては,祭りはいつまでも続く。
旧コメント:「主役の女の子がかわいい。タクトを持たないストコフスキーの指揮が妙に記憶に残ります」
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