[コメント] 劇場総集編 SSSS.GRIDMAN(2023/日)
グリッドマンはもったいない作品である。特撮オマージュと魅力的なキャラが大人気となり、セカイ系SFとしてはヱヴァを超え、まどマギを凌駕しそうな内容だったのに、そちらの方はまるで話題にならなかったからだ。TVシリーズは★5相当だが、ダイジェストたる本作はそれゆえに★ひとつマイナスの★4とした。ぜひ本作の代わりにTVシリーズを見て欲しいと思う。
舞台となったツツジ台とそこに暮らす人々は、神であるアカネが創ったものである。アカネは女子高生として被造物の六花と友だちになり、帰宅後は怪獣を造って街を破壊し修復する。
神がなぜ創造と破壊を行うのかというのは、キリスト教に興味を持つ人のほとんどが抱く疑問である。
この作品は、その回答を用意する。この点で本作は、意匠だけ借りてきてキリスト教の本質に1ミリも近づけなかったヱヴァをはるかに凌駕する。
アカネと六花の関係も斬新だ。神と人間が友人関係にあるからだ。オーソドクスなキリスト教では、人は神の羊である。友だちという発想は無い。
神と人との関係に新しい発想を持ち込むのは、欧米世界の先端SFと同じ足場を確保していると言える。
人と怪獣とは、神の被造物という点で同じである。そして、アカネとアレックス・ケレブもまた神の両面のカリカチュアとして理解可能であろう。
現代の人類は、AIという知的被造物を産みだした。それは人格を持つと言えるのか、また将来的には生物と呼べるものになるのか、といってテーマはブレードランナーでメジャーになったテーマである。そのテーマはHBOドラマのウエストワールドが発展させたが、シーズン4で打ち切りとなった。
グリッドマンは、ネット上の実態のない存在であるという点を活かし、そのテーマをもっと現状に合わせたかたちで展開可能にした。
それなのに、六花がかわいすぎた。誰も思想的ハードSFの側面をグリッドマンに求めようとしなかった。それが、本作の悲劇だと思う。なぜ、岡田斗司夫や宮台真司などは本作の思想面に食いつかなかったのだろう。残念だ。
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