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[コメント] うみべの女の子(2021/日)

一筋縄ではいかない、捻った作劇、プロット展開が面白い。中学生を主人公にして、ほとんどポルノ映画と云ってもよいぐらい情交シーンの多い作品だが、同時に、キスがテーマの映画なのだ。
ゑぎ

 まず、小梅−石川瑠華と磯部−青木柚の最初のシーン(ピザまんが無かったから遠くのセブンまで行った、というシーン)。小梅は磯部からのキスを拒む。こゝで既に、この映画はキスの映画だな、と思わせる。小梅は三崎先輩−倉悠貴からのキスを拒むシーンもある。また、中盤以降、磯部が小梅にキスをするチャンスは2回描かれる。というように、全編通じて、小梅のファーストキス(映画中での)について、観客は関心を持ち続けるように描かれている。結果は書かないが、これが、捻った作劇なのだ。あるいは、本作は幽霊譚でもある。この点に関しても、どう収束させるのか、というのは一つのテーマになる(これも結果は書かないが)。

 あるいは、学校の校舎の裏辺りで、小梅と磯辺が言い合うシーンがあり、このシーンの終わりに雨が降ってくるのだが、中途半端な雨降らしで、正直がっかりしたのだ。だが、台風の中の文化祭(磯辺の誕生日でもある)のシーケンスで描かれる、過剰な暴風雨の描写が、私のフラストレーションも吹き飛ばした。もしかしたら、先の中途半端な雨降らしは、ワザとだったのか?文化祭の様子も、暴風雨の中、堤防を歩く小梅のシーンも、もっと突っ込んで描いても良かったとも思ったが、はっぴいえんどの「風を集めて」も面白かったし、学校での先生たちの対応や、物が飛ばされるカット、堤防を打つ波しぶきカットも見応えがあり、私は、こゝをクライマックスにしてエンドでも良かったんじゃないか、と思ったぐらいだ。

 さて、タイトルの「うみべの女の子」は、主人公の小梅のことを指している、素直な命名であることは間違いないと思うが、実は、劇中で言及されるのは別人を指している、というのも人を食っているというか、図太さを感じさせた(原作からそうなのかも知れないが)。あと、中田青渚前田旺志郎も含めて、上手く中学生らしさを出している。

(評価:★3)

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