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[コメント] 死なない頭脳(1962/米)

20年代制作なら快作だが60年代にしては温い。しかし幾らでもグロくできるのにあっさり纏めるのは上品で好ましいかも知れない。ともあれ忘れ難いヴァージニア・リースの画一発で記憶から離れなくなる一作。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主治医のハーブ・エヴァースがヴァージニア・リースを事故に合わせ首だけにする序盤のとんでもない自動車事故が即物的で素晴らしい。これは本当の事故だったのか、それとも実験台を手に入れるための命懸けの策略だったのか。彼女のヘンな被り物は何だろうと思っていたら、あれは包帯なんですな。

主治医は呆れたことにナンパに出かけてアデール・ラモントのミス・ボディビューティフルショーのとビキニ撮影ショー。こういうのは洋邦問わずあったんですな、イマムラの『人類学入門』が想起される。この女が禍根を乗り越えもう一度医師に協力するという馬鹿な展開。

勿論騙されていて、主治医はラモントの首をもいで彼女の体とヴァージニア・リースの頭をくっつけようという、とんでもない魂胆だと終盤判明する。そして「科学が進歩するのは犯罪か?」と問われる。重要な問いかも知れないが、この物語でそれを考えるのは無理筋だと思った。

移植実験について「外部の組織は体が受け付けない」と首だけになったヴァージニア・リースは主張するのだが、助手のレスリー・ダニエルズが発見された血清がそれを可能にするのだと語る。この血清の注入で女は、扉の奥に格納された接合失敗人間と意志疎通できるようにになる。

この接合失敗人間の出現というネタを映画は終盤まで引っ張り、ついに登場して主治医を襲い、火事になり、ヴァージニア・リースではなくてラモントを救い出す。この選択はリース自身が接合失敗人間に依頼したものに違いない。リースは死にたかった、ということなのだろう。その感慨は自殺志願者の願望のようにも取れた。もちろん、首だけの状態でいつまでも行かされてはたまったものではない。筒井康隆の類似のショートショートは本作のパクリだっただろうか。

(評価:★3)

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