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[コメント] ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2022/日)

ぬいぐるみと無縁な人生のうえ、誰に対してもやさしくないオレには難しい映画だったが、なにか新しいことをやろうとしていると感じた。そう見えた。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







君たちのやさしさって、本当は弱さのことじゃないの? などと思ってると、ちゃんとそこには言及がある。疑問や不可解さは放置されず、真っ当に言及され回収される。こらー頭いいやつが作ってるなと思って、少し警戒した。

自分はぬいぐるみ(とその世界)に疎いので、彼らについて知ったような言葉は言えない。 「そ、そうなんかー君たち…」などと思うばかり。言うちゃ悪いけど、マツケンもどきパイセンを筆頭に部室の空気はオレには気持ち悪く、耐えがたい。しかしクレバーな脚本は、なぜ彼らがそうならざるをえないのかも一部描いている。

マツケンもどきパイセンが「なぜ人と人は争うのだろう?」なんて安い火の鳥みたいなこと言ってましたね。オレが思い出したのは『なまいきシャルロット』だ。テレビで紛争だか難民だか(そこ忘れるのかよ)のニュースやってて、シャルロットはニュースの深刻さを真剣に(過剰に)受けとめるんですね。ボンクラ兄貴はどーでもエーワイわしゃ知らんワイみたいな態度。アニキ感じ悪いんだけど、これは誰もが身につける処世術ですよね。ニュースのすべてにいちいち深刻になってたら大変だ。どこかで自分と冷酷に切り離して、折りあいをつける。我々はそうやって狂った世界に順応し、汚れていく。シャルロットはピカピカの中2なので、ニュースにもいちいちクレイジーバンプ(狂った受け身)をとる。

この映画では、中2どころか大学生になっても彼らは煩悶している。生活に支障が出るくらい傷ついていて、しかもその傷が治らない。だから彼らは、ぬいぐるみとしゃべる(なぜだ)。なぜかは判らぬが彼らが見つけた、彼らなりの世界との折りあいのつけかたなのだろう。

疑問なのだが、ヌイグルマーの皆さんが全員そんなセラピーじみたおつきあいをぬいぐるみとしているとはオレには考えにくいのだ。中にはただの毛玉フェチもいるだろうと思うのだ。いや、ぬいぐるみド素人の自分に確信はない。毛玉フェチも含めて、おおむね、総じてこういう感じなんだよ、ということかもしれぬ。

かくも生きづらい皆さんなれど、オレの100倍は善良だと思うので幸せになっていただきたいと思った。ただ、主人公が自分の恋愛不能の是非を確かめるために当て馬とつきあうのはすげえ邪悪だよな。オレはこういうやつ嫌いだ。そもそも、つきあおうとしたら即つきあえる。恋愛にならなきゃ即解消か。いい気なもんですな。こいつ高校の時からモテてたな。面白いやつだ、気に入った。殺すのは最後にしてやる(やさしくない)。

(評価:★3)

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