[コメント] 復讐は私にまかせて(2021/インドネシア=シンガポール=独)
いきなりバイクアクション。喋る看板。ベテラン娼婦とED。人の妻を奪った金持ち。成敗に乗り込む青年アジョ(マルティーノ・リオ)と迎え撃つ女用心棒イトゥン(ラディア・シェリル)の壮絶バトル。そしてフォーリンラブ。ここまででまだ20分も経ってない。
息もつかせぬ怒涛の展開はこの復讐劇のほんの入り口。続く純愛ありエロあり、裏切りあり殺人あり、幼時のおぞましい記憶あり黒幕あり、得体の知れない化身あり。リアルとファンタジーが混濁する数奇で奇妙な展開に唖然。私は「羊男」が活躍する初期の村上春樹作品を連想した。
うっかりするとカルトな“とんでもエンタメ”にみえるのですが決して映画文法の正統は外さず、背景には一本筋の通ったルサンチマンが潜んでるのが分かります。なるほど、矢田部吉彦氏によるエドウィン監督のインタビィーによると、植民地時代のインドネシアに根差したオランダ派と日本派の対立や、その流れを汲んだスハルト政権時代の圧政への反発、そして伝統的な女性蔑視とマチズモ体質批判が込められているのだそうです。
そういえば配給会社につけらた「インドネシアのマカロニウェスタン」という的外れな宣伝文句のせいでコケてしまったモーリー・スルヤ監督の『マルリナの明日』も強固な意志で武装した既成のカタチに捕らわれないフェミニズム映画の傑作でした。
恐るべし、瞠目のインドネシア映画パワー。他の作品の日本公開を切望します!!
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