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[コメント] 一晩中(1982/ベルギー=仏)

冒頭から夜。ファーストカットの、鋪道を左から右へ歩いて来るのはオーロール・クレマンか。画面手前から奥へ歩く男の後ろ姿のシルエットや、高速道路で走る自動車の中、運転する女性ともたれかかっている助手席の男性のショットなどが繋がれる。
ゑぎ

 そして、赤いドレスのクレマンのシーンになる。ホテルの部屋か。電話をかける。相手が出るが、何も喋らずに切る。所在を確認したということか、急に表へ出て、タクシーに乗り男のアパートへ。路上から2階の男の部屋を見るクレマン。

 いったい何組の男女、あるいは同性のカップル(あるいは一人ぼっちの人)の挿話が繋がれたのだろう。最初からこういう趣向だと分かっていれば、数えたのだが。レストランやバーで、男性と女性がおり、男性が帰りかけるが、いきなり2人抱き合う、なんて場面を続ける。ジュークボックスの前で踊る男女の演出は、お互いをメチャクチャ振り回す変な演出。『私、あなた、彼、彼女』のシャンタル・アケルマンと彼女とのベッドシーンを思い起こす。レストランで3人(男性2人、女性1人)で座っていて、皆が別々の方向に歩いて行くシーンもある。全体に、ドアの前で待つ男性が多かった感覚。特に前半はドアの映画だと感じる。男女で歩いてきて、ワタシのウチはこゝよ、と云われて、ドアの前で待っている場面とかも。あるいは、女性が、家から出て来る動作も多い。変則的に、子供だけが猫を持って出て来る、なんてのも。

 後半は、夜も更けたということだろう、ベッドルームの場面が増えて来る。暑くて眠れず、窓の外を見る男性。二人でベッドに寝ながら、愛も冷めた、という男女。このあたりは窓の映画。そして唐突に朝になる。カバンに服を詰め、ホテルに泊まった白いスーツの女性が、家に帰ると夫はまだ寝ている。ネグリジェ姿でベッドに入った途端に目覚まし時計が鳴り、立ち上がって部屋を出る、というのがアケルマンらしいアイロニー。ラストは予想通りクレマンで締める。廊下で男性とダンスをするが、こゝ、凄いトラフィックのノイズが入る。電話が鳴って、部屋に入る。クレマンの返事は「ウイ」ばかり。男とベッドに倒れ込んで暗転。

 矢張り、カロリーヌ・シャンプティエによる夜の撮影はとても魅力的で、ずっと飽きずに見ていられるし、これはこれで大変な撮影現場だっただろうと想像するが、もう少し人物を減らしても良かったんじゃないかと思った。クレマンら何組かの人物は再登場するのだが、私は、前半の人々全部の続きが見たくなった。

(評価:★3)

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