[コメント] 囚われの女(2000/ベルギー=仏)
男は女を心から愛している。女も男の愛を真摯に受け入れている。なのにあの醜悪な性行為はなんだ。この男の「愛」とはいったい何なのだろうか。女はいったい何に「愛」を感じているのだろうか。この不毛な愛の顛末にはシャンタル・アケルマンの恩讐が充満している。
男は、女は、「こうあるべきだ」で「こうあるはずだ」という相互合意のように見えながら、本当は永遠に交わらない相互幻想。シモン(スタニスラス・メラール)は"私は男である"という支配欲に気づいていない。アリアーヌ(シルヴィー・テステュー)は"私は女である"という依存心に気づいていない。
傲慢と甘えが作り出した二人の歪な関係はデフォルメされた「ジェンダー呪縛」の暗喩なのだろう。うなだれて小舟で岸へ向かう男の虚無に、この半永久的になくならないかもしれない呪縛を前にしたシャンタル・アケルマンの諦観がかさなってみえた。
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