[コメント] 囚われの女(2000/ベルギー=仏)
海辺で7人ぐらいの若い女性が、はしゃいでいる。その中に、ヒロインのアリアーヌ−シルヴィー・テステューとその友人のアンドレ−オリヴィア・ボナミーがいる。一人この8ミリ映画を見ていた(上映していた)男はシモン−スタニスラス・メラール。実は彼が主人公だ。映写機の横のシモンは、アリアーヌの口を読もうと(読唇しようと)する。「俺は大好き」と云っている?
続いてアリアーヌを尾行するシモン。自動車で追跡する。長い階段を歩いて行くアリアーヌのショットがいい。しかし、この後、二人は同居していると分かって吃驚。また、アンドレも家に来て、シモンからアリアーヌのことを世話するよう頼まれるのだ。全体、アンドレは出番が少ないが、本作は、アリアーヌをめぐるシモンとアンドレの三角関係を描いている、という見方ができるだろう。
本作も良いシーン良いショットが沢山ある。まずは、美しい色遣い。シモンの家の屋内装飾。廊下の壁はピンク系で、シモンの寝室の壁は薄い青色。黄緑のベッドカバーが映える。あるいは、シモンのベルベット地のような青いスーツも綺麗だ。そして、バスタブの中にいるシモンの奥の、すりガラスの向こうにシャワーを浴びるアリアーヌが見えるショット。眠るアリアーヌに密着して愛撫するシモンのシーンが3回繰り返される演出。ブローニュの森(?)の娼婦たちを横移動して自動車からのミタメで見せるシーンといい、トレイラーにも採録されていた、走る自動車の中でシモンとアリアーヌがキスするシーンといい、なんて不穏な画面、かつ艶めかしい運動だろう。
そして、終盤、アリアーヌとアンドレの関係の核心を聞き出したいシモンが、何度もアリアーヌに嘘をついていないか確認するが、アンドレの話が出てこない、というのも面白い。また、ラスト近くで、開巻クレジットバックの夜の海が、再度登場する。これって、開巻ショットがフラッシュ・フォワードだったとも取れるわけだが、この夜の海の使い方は、ジャン=ピエール・メルヴィルの『この手紙を読むときは』とそっくりだ。音楽(ラフマニノフだそう)の使い方はゴダール(『軽蔑』あたり)、自動車での尾行シーンをはじめとして『めまい』を想起させる部分もあるが、夜の海のショットは、より直截的な、メルヴィルへのオマージュだと感じられた。
#備忘。
・オペラ歌手役でオーロール・クレマンがワンシーンのみ登場。
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