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[コメント] To Leslie トゥ・レスリー(2022/米)

舞台はテキサス。クレジットバックは、レスリーが持っているスナップ写真。どれも指紋が付いていたり、傷んでいたり。途中、宝くじで19万ドル当たった時の、テレビで放送されたニュース番組の録画ビデオ映像も挿入される。
ゑぎ

 クレジット開けは、レスリー−アンドレア・ライズボローがモーテルから追い出されるシーン。仕方なく、都会に住む息子ジェームズ−オーウェン・ティーグを頼る。これは宝くじが当たってから6年後。後のセリフで、13歳のジェームズを置き去りにした、とあるから、ジェームズは19歳ということだ。レスリーはジェームズの家に数日間泊まるが、ジェームズだけでなく、同居人のダーレンの金も盗んで酒を飲み、追い出される。そして、ジェームズが泣きついて頼んだ、レスリーの地元のダッチ−スティーヴン・ルートとナンシー−アリソン・ジャネイの家へ。しかし、こゝも数日で締めだされる。ナンシーのレスリーに対する憎悪というか二人の確執が印象付けられるお膳立てだ。

 さて、カメラワークについては、前半は(上記のあたりまでは)ずっと手持ち。風景ショットも小さく揺れている。私は、このまゝ全カット手持ちかと、嫌気がさしてきたのだが、ロイヤルのモーテルのシーンあたりから固定ショットが出て来る。ロイヤル−アンドレ・ロヨとスウィーニー−マーク・マロンが窓からレスリーを見るショットは完全に固定だ。後半も手持ちは多いが、徐々に固定もしくは滑らかなドリーも出現してくるのだ。これは、明らかに、レスリーの環境(あるいは心境)の変化を表象した演出だ。

 もっとも良いシーン・ショットは、酒場のカウンターにいてじっとしているレスリーをゆっくりカウンター内から横移動して見せるショットだろう。ジュークボックスからウィリー・ネルソンの曲が流れているシーン。この後、レスリーは昔住んでいた家を訪ね、翌日から酒を断つ。あともう一つあげるなら、スウィーニーを罵倒し、ロイヤルのモーテルを飛び出したレスリーが、息子ジェームズに電話した後、町を歩くシーンの横移動ショットだ。酒場に入るが、断っていた酒を飲むのかどうか、という場面に繋がる。

 というワケで、本作に関して、まず賞賛されるべきは、アンドレア・ライズボローの表現力、顔面(および身体)の使い方についてだということで、私も異論はないけれど、カメラワークについても、よく考えられた演出である、という点は特記すべきだと思う。エンディングは、ある風景の固定ショット。これをポン引きしてロングショットに繋いで暗転する。登場人物の心情と共に、我々観客の心持ちも、フィルムに定着するかのように感じられる。佳編だと思う。

(評価:★4)

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