[コメント] 放蕩息子の帰還/辱められた人々(2003/伊=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「放蕩息子の帰還」は『労働者たち、農民たち』からイバラのエピソードが抜粋される。抜粋なら他の切実な越冬のエピソードのほうが相応しいと思う。「辱められた人々」は『労働者たち』の後日譚で切実。1946年、イタリア共和国により市場経済が復興し始め、村人はより安楽な都会的生活を夢見て村を去るという、協同組合、自立した農本的結社建設の消失が語られる。
労働者と農民が一緒になって歩くという象徴的な導入。もう彼らに対立はない。「ここへ来て一年、列車も走り出した」。すると新参者が現れて土地の権利を告げる。どこにも土地台帳があり所有者がいる、いなければそこは国有地だ。ここは元は荒地で君たちは土地を改良した。だから所有者は考えた、土地を元に戻すことはない。君たちと契約を望んでいる。契約しなければ憲兵だ。
これまで黙認したではないか、憲兵を呼べばいい、と回答すると、次のショットではすでに憲兵が三人いる。小川の岩に腰かけて。赤いマフラーした若者だが知的な説得をする、この落差はユーモアになっている。曰く、私たちは共和国をつくる。協同組合はイタリアに何千とある。しかし今は共和国がある。一日に15時間も働くのか。アメリカではイタリアの半値でものを売っている。経済は世界でひとつだ、生産量は少ないと破裂する。技術の遅れは反経済的だ。
「都会で暮らせるの?」と声がかかる。長い沈黙。いつもの鳥の合唱に、エンジンの空吹かしの音が混じる。「ここで頑張る気が尽きたのよ」「仕事はいくらでもある」。家の入口に横座りになりコミューンを諦めた女、パンダウンしてひからびた雑草を映して環境破壊が予言され、映画は終わる。
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