ゼンカイジャーの世界は恐ろしく素直な、戦隊ものとして異色だが逆にどの戦隊ものとも合体映画が作れる「まっすぐな」世界だった。だが、問題はそれを合体させたドンブラザーズが、あまりに脚本家井上敏樹の作家性が色濃いひねくれた作品であるために、ドラマ的には全く水と油、まったくミキサーかなにかで混ぜようとした努力のかけらも見えない、一個の作品とはいえないキメラにしあがってしまったのだ。これは、お祭りだというのに自作の正当な続編を捻じ込んでしまった井上の責任だろう。…いや、何の企画を利用しても続編を発表したかったあのヒトの気持ちはわかるんだけどね。

ジロウの指揮下にある新制ドンブラザーズが、管理された戦闘スタイルとジロウに与えられた高待遇とに疲れてゆく過程と、脱退。記憶を取り戻したタロウとの関係のなかで、自由な戦闘スタイルに充実を取り戻すメンバー。そして高姿勢に見えて、縁あるものとの関係を誰よりも大切にしたタロウの悲劇的な運命…おい、こりゃ重すぎないかい。確かにドンブラ世界の飄々とした語り口で語られるんだが、お祭りのバカ話で片付けられる問題じゃない。その上、凶弾に倒れたタロウを甦らせるために、ひとりの友が密かに命を落とすのだ…おい、こんな話でいいのか？お祭り！！

…なもんで、ドンブラファンには一見必泣の重要作品だが、戦隊ヒーロー好きのキッズファンにはなんだかわかんないお話。