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[コメント] 春の驟雨(1932/ハンガリー=仏)

男に石を砲丸のように投げて仁王立ちになり、ウェイトレスの衣装着て鏡で見て悦ぶアナベラ。儚い陽気さ印象に残る。ほとんどサウンド版の印象で、ペバレル・マーレイはなぜハンガリーにいるのだろう、ライトの明滅など撮影は当然に上等。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







4月1日の夜、処女の純血が汚されないよう、天国の母が雨を降らせる伝説、と冒頭に字幕が入る。アナベラが天国の母に守られる話かと思っていたら、アナベラが母になって天国から子供を守る話だった。

アナベラは「女中身分証明書」を携帯し、辞めさせられるときに「不品行により解雇」と記される。子沢山の子守りをし、家禽に餌やりをして、引き出し型の木製ベッドで眠る。私生児は禁止、孤児院へ入れると役人たちが集まってきて赤ん坊を取られる。ひどい国である。

当時らしい映画の決まり事がいまの眼には不思議に見える件が散見される。綺麗に化粧したアナベラは貧乏なお手伝いには見えない。夜に洗濯ものを取り込むスリーブ姿の彼女は殆ど天使のように見える。このとき男にキスを奪われ、続いて落とした洗濯ものなど映されるが、これが強姦のショットだった。

女主人は彼女のベッドに子供服を見つけて怒り解雇を告げるのだが、私は何のことだか判らなかった。懐妊も彼女のお腹が大きくなるショットがないものだから、赤ん坊抱いているのを見て始めて、逆算してみて事情が判明したのだった。しかし、終盤に襤褸着て子供たちに追われる件は、序盤からの落差が激しく迫ってくるものがある。古今東西、子供とは保守的なものである。

鐘乱れ打ちの教会へ赤ん坊抱いて行くアナベラ。群衆を縦断してひとりマリア像の前へ出て、颯爽と十字切って笑顔を見せ、寄付して帰る。最後は転倒して死んで天国へ行く。そして娘が男に襲われるとき、黄金のバケツで雨を降らせて別れさせ、雲のうえでアップのアナベラは漫画のような満面の笑みを浮かべるのだった。

(評価:★3)

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