[コメント] そして泥船はゆく(2013/日)
俺は「何もできないから何もしない」とうそぶいて無為な日々を過ぎゆくまま生きる男(渋川清彦)の物語。そんな男のやけっぱちで投げやりな決断はこの男を疫病神としてこの世に降臨させる。世間では「何もしない」という狂気は凶器にもなり得るというファンタジー。
芸達者でノリのいい渋川清彦の怠惰男ぶりが、友人(飯田芳)や妹(高橋綾沙)の常識や良心をぶっちぎって暴走する前半の展開は行きつく先が読めず面白い。ところがクライマックスというもいえる終盤のクオリティが残念。
ネタバレになるから詳しくは書けないが「どろ船」に乗った男がたどる顛末描写のチープさは(たとえ予算のない自主制作の常としても)いかんともしがたく、なんとか筋(意味)は追えるものの(ファンタージーだと言い訳しても)やはり説得力に欠ける。
※この混沌描写は渡辺紘文が物語を転調させる際に使う特長的な演出手法だということが後の作品群を観るとわかる。その手法は『プールサイドマン』(2016)や『普通は走り出す』(2018)で完成の域に達し見事な効果をあげていることを書き添えておく。
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