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[コメント] 冒険者たち(1967/仏)

改めて考えてみると、観た当時に思った不安定さが逆に大きな魅力だったのだな。と思わされます。お陰でようやく書けました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 日本でファンが多いのにはいくつもの理由は考えられようが、一番はやはりキャラクタの魅力だろう。アラン=ドロンは確かにフランスの大スターではあるが、実際には世界的な知名度はさほど高くない。ただ、日本だけは別で、本国フランスよりも人気があるほど。そのドロンが実に魅力的に作られていることが最初にあったとは思う。それに本作の場合、ヴァンチュラがおいしい役を演じてる。本作にあってはドロンよりも落ち着いた、複雑な役を上手く演じきっている。そして何よりシムカスの存在感!これが日本では最も受けたのではないかと思う。

 事実本作における彼女の存在感は大変面白い。劇中における彼女はまだ子供である。自分が何者かも、何ができるのかも知らず、今はチャレンジの段階。それこそ前衛芸術をやってみたり、旅をしてみたり、そしてことごとくそれらに失敗…今回の宝探しも、彼女にとってはチャレンジの一貫であったのだろう。成功すれば儲けもの。失敗しても良い思い出になる。だから悲壮感はなく、まるで遠足のように楽しんでいる。ハリウッド形式で本作を作ったのなら、彼女は浮きまくってしまっただろうけど、むしろそう言う軽さを主眼とする本作にはよくはまっている。それにドロン演じるマヌーもバンチュラ演じるローランドも、年齢はともかくどこか青年っぽいところがあって、センチメンタルさを強調しているため、丁度はまってた。そして二人のセンチメンタリズムがヒロインのシムカス退場によって明らかにされる。残された男二人にとって彼女の不在はあまりにも重く、折角の大金を手に入れても本当に楽しむことはできない。後半はその寂しさに彩られており、シムカスはたとえ画面に出ていなくても、この映画を支配していることが分かる。面白い構成である。特にそれはバンチュラの方によく現れていただろう。

 実はそう言うことで結構感心して観ていたのだが、マヌーの最後のシーンであれ?と思わされた。それまでマヌーはてっきりリティシアを忘れられないのだと思ったのだが、ひょっとして、彼が本当に好きだったのはローランドではなかったか?とも思えるのだ。性的な意味ではなく、一人の人間としてこれまでのローランドが好きだったのに、当のローランドはリティシアを忘れられずにウジウジしっぱなし。ローランドのそんな姿を見たくなかっただけなのかもしれない。

 …そう考えてみると、この作品は本当に“青春映画”と言っても良いのかもしれない。いくつになっても人は青春を生きることができる。それは精神的な不安定さなのかもしてないが、その点が日本人に受け入れられたのではないだろうか。

 後は、風景がとても綺麗なのも当然挙げておくべきだろう。前半の海のシーンも良いけど、後半の島の無機質な美しさは観ているだけで気持ちよくなる。凝ったカメラワークも良し。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Keita[*]

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