[コメント] 満州帝国崩壊 ソビエト進軍1945(1982/露)
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冒頭ナレ。「ソ連から日本へ宣戦布告が発布された。米英中は7月26日に降伏を要求したが日本政府は拒否。同盟国はソ連に対日本戦への参戦の協力を仰いできた。それにより戦争の期間を短縮し、犠牲者を減らし、世界平和に協力することになる」ナレを押しのけてタイトル。ラジオ放送が折々挟まれる。8月7日、中国、朝鮮、モンゴルの人々を救うため、国境超えて参戦、満州ダラエ・ヌールの基地を占領したとアナウンス。10日には満州の奥まで前進し続け、バイカル東湖岸地域ではヒンガン山脈方面へ一日で170キロ進軍。
本作は続編らしく、冒頭で前作のダイジェストが語られており、もうひとつよく判らないが、ともかく将軍が作戦説明している。砂漠を超えてヒンガン山脈(内モンゴルと黒竜江の間の興安嶺山脈)にて主力戦隊、資源輸送機が到着まで死守、敵拠点は迂回、できるだけ戦わず発見されぬよう、無線は原則禁止。合流した国境沿いの部隊のチホノフ大尉は部下の闘う気満々を伝えて不満。砂漠では夜、ソ連映画得意の戦車部隊がバンバン砲撃しているが敵がどこにいるのか不明。
説明不足で判り難いが、移動が始まったのだろう、新兵が多い素人部隊は別に身を潜める訳でもなく砂漠でだらだら待機。日本兵捕虜がぞろぞろ行進させられ、捕まったらハラキリするはずだ、暇がなかったんだろうと冗談飛ばしている。日本の決死隊(ケッセンタイと呼ばれている)が多いので気を付けろと事前に指示があった通り、日本兵がひとりイモリのように傍を間抜けに匍匐前進しているのが発見されて捕虜、荷物を放り投げるとそれは爆弾で爆発するというギャグがある。「ハラキリさせるな」「入隊前に洗礼受けて、生きながら死人となり名前もなくなる。彼はもう死人なんです。彼は陛下のために死んでいる」と日本通が説明している。他者の批評は容赦ないものだ。
路上に轍を発見して、決死隊かも知れないとジープ連ねて追跡。日本の戦車隊より短歌の方が本物、みたいな哲学的な問答がときどき挟まれる。戦死することは彼の子々孫々を絶滅させることだとも云われ、日本軍を批評している。捕虜は天知茂みたいで、隣の重病人の着物を直すような好人物の描写がありつつ、脱走して集団にナイフで斬りかかって簡単に再捕獲、バンザイニッポンと片言で叫んでいる。決死隊はまたもふたり、隠れる方法もない砂漠を虫のように匍匐前進してきて戦車を狙い、砲撃で炎とともに一瞬で遺体も残らず消滅するトンデモショットが猛烈。
部隊は戦車隊と合流後、山脈の麓の内モンゴの村を視察。ラマ教の立派な寺院の門前には豪華な民族衣装の地主がソ連軍を歓迎、お礼に羊を百匹贈ると云われ、土地の風習で断れないというコメディ。テント張った羊飼いの住民は日本軍が潜んでいると教え、彼は鞭で打たれている。寺院から日本軍の銃撃が突然始まり戦闘。方向感覚が判らないのだが山腹を行く戦車隊もボンボンやられ、ソ連映画のタッチで闇雲に盛り上がる。発見した寺院の地下では病床に殺された(自決とは云われない)兵隊の遺体が並んでいるという件がある。「ここで死んでたまるか、サムライも短歌も決死隊もウンザリだ」と戦うソ連兵たちであったが、地下弾薬に火つけて一緒に吹っ飛んだりもしている。
日本関係以外は、息子を探しに来たロシア人の反革命軍のスパイが捕まる件があり、この時期でもそんな人がいたと学ぶ。その他、大尉の妾の美人軍医を巡る三角関係とか、天知茂にタンクに穴開けられて水不足とかの断片があるがあんまり盛り上げようとはしていない群像劇。「スターリンの野望」という日本版の広告は日本側の批評ではあるがそういう含意は映画自体にはない。
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