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[コメント] 結婚式と赤ちゃん(1958/米)

「結婚式と出産」専門のカメラマンがドキュ映画を志望する話。カサヴェデスが影響を受けたらしいが、上手く行かない男女を描いて正にカサヴェデス好み。基本コメディのなかコメディ的人生を疎ましくも憐れむ視線が累積される。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なぜ結婚してくれないのか、付き合って3年、もう30になると女は男を詰って泣く。男は祭りのドキュ映画撮れば貯金ができて結婚できると応えるが、購入された撮影機を女は相談がないと怒る。男はさめざめ泣きながらじゃあ結婚しようと云い、そんなプロポーズがあるかと女は怒る。

このキャメラは次のお祭りの撮影、顔見知りの屋台の女に預けようとして、コード外し忘れて引っ張って路上に落として、ワンショットで見事に粉々になる。彼女の前で短気起こしてしまうこの一瞬、どうしようもなさの針がふり切れる。屋台の女とは冗談云い合ういい友達だったのに、これで関係はお終いなんだろう。

ふたりが預かっているトニーという少年と、少年を迎えに来るらしい道化師が本業なのか趣味なのか判らない男がいる(もうひとつ人間関係が判り難かったが)。婚約発表の挨拶の後ろで延々とパントマイムのコメディをして主人公を参らせる。主人公だけが背を向けていて対面するお客が何を笑っているのか判らいのだ。この件もどうしようもなさを募らせるものだった。

途中で登場する男の母親が素晴らしい。トランク下げて進む姿が律儀に切り返しで撮られる。火事で追い出されて息子を訪ねてくる。イタリア系の人たちは一般に大家族をつくるのものなのだろうに、バラバラでいる。息子は同居できないと、イタリア系の老人ホームに連れて行き、「自分が悪人に思えてムカムカする」と彼女に零す。

母親は社会福祉事務所で年金の受給資格なしと云われ、墓石の交換を商店で断られる。そして広い広い墓地に行く。二人は母を先祖の墓所に探す。女は受付で尋ねろと云うのだが男は出鱈目に探す。やっと発見するが、座り込んだ母はホームへは帰らないと云う。女は男に指輪を返し、貴方に必要なのはお母さんよと云う。男は冒頭のように結婚式の写真撮影を始めるが、うまく撮れないという悪夢のようなラスト。

(評価:★4)

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