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[コメント] 女神(1934/中国)

ナルセよりナルセらしい淡々として落ち着いた演出、そこから飛躍する一瞬の脚力の冴えが素晴らしく、阮玲玉の零れるような微笑みが忘れ難い。筋は平凡ゆえに価値高い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ナルセは『乙女ごころ三姉妹』(35年)でまだキャメラ振り回していた時代。

警察に追われ、骨までしゃぶられる太っちょヤクザ(章志直)と契約。彼に自室に踏み込まれても何の抵抗もせず食事を出しているような関係。意地悪バアサンに除け者にされて「私生児(賤種)って何」と尋ねる息子を膝に抱いて、気がついたら夜の九時、眠った息子を寝かして夜の街。

中国も義務教育のない時代なのだろう。ヤクザに見つけられない隠し場所みつけて稼いだ金を隠して、一念発起して学校に通わせて、発表会で子供の歌聴いた小さな幸せ。娼婦の子供がいると親から学校へ苦情の投書多数、校長(李君磐)は退学を告げに来る。阮玲玉はキャメラ目線で校長(観客)を正面から見据えて、訴え泣く。ここが本作のベストショットで、淡々たるリアリズムの積み重ねからの転調が鮮やか。サイレント映画屈指の名場面と思われる。校長が前言を翻し、学校で彼女を保護しようと孤軍奮闘、熱弁をふるい辞めてしまうのは、人として当然のことと思われた。

ヤクザ殺して自由になり懲役。子供は校長の手で育てられ、母は死んだと教えられることになる。発展途上国にはどこにでもある哀しい物語だった。後付けの劇伴は派手だがいい。上海租界の夜景はここでももの凄い。

(評価:★5)

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