[コメント] 深夜の歌声(1937/中国)
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マントとフードで硫酸で醜くはれ上がった顔を隠す怪人(金山)はエレファントマンが想起されるものでインパクトがあり、硫酸かけられて包帯取ったら治っていなかった件は可哀想。『オペラの怪人』同様に恐怖に執着しない展開で、ドライヤーの深遠やロン・チャイニーの驚愕の展開には及ばない(しかしリンチのように同情を煽る訳ではないのはいい)。
その代わりにあるのは、悲劇を乗り越えようと呼びかける革命への熱意だった。狭義には革命党(共産党)の闘志が国民党の地主階級と戦う話だが、しかし日中戦争中だから当然に抗日にアダプトして鑑賞された由。♪封建の魔王と最後まで戦わん、司馬遷のように不正を暴く ♪黄河の魚は津波を起こして船をひっくり返す ♪自由、平等、博愛(毛沢東が嫌いそうな西洋好みの劇の一節) 熱い歌が唄われる。
エンジェル劇団なる背広連中が田舎町で正義を説く訳で、よくある物語は土着がこれを駆逐するのだが、本作は正反対、都会が田舎を平定するのが革命劇らしいところなんだろう。老朽化劇場の生き残り代表は小指の爪がとても長く脚の悪い門番の爺さん(東野英治郎激似)で、若い頃も演じて印象に残る。
物語はリアリズムで揚げ足を取ろうと思えば簡単。怪人の小鴎(施超)への、唱和するだけの歌唱指導で小鴎がぐんぐん上達するのはあり得ないし、劇団経理が不入りだ、あと数日しか予算が続かないと嘆いている処に、怪人が「熱血」なる革命劇を小鴎に渡してこれが大反響で劇団は存続するのだが、団員が練習する時間はなかっただろう。こういうのは引っかかる。
胡萍(李曉霞)はスタアだったようで、ポスターでも金山より上に名前がある。だから彼女のロマンス、小鴎と引き合わせようとする怪人などに時間が取られたのだろうが、イマイチでダレる。最初に怪人の歌を聴きに出てくる件は意味不明で求心力のある画で、狂った彼女を慰めるため毎晩歌を唄う怪人とはいい話なのだが、狂気が簡単に治るとは思われず、謎解きが進むと面白くなくなってしまった。
G線上のアリアほか、劇伴はパクリが多いのだが、OPの格好いいテーマは自前だろうか。最後は革命軍と判った怪人が松明持った大勢の民衆に追われ、河に飛び込む。怪人の革命は大勢の支援がある訳ではなく、大多数を敵に回している。このニュアンスが心に残った。
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