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[コメント] 萬世流芳(1943/中国=日)

抗英映画として製作されたのに中国では抗日映画と解してヒットしたと云われる本作、これを知らずに素で観ると抗英映画でしかない。観客のテキスト解釈が生産的に機能した好例として、本作は尊ばれるべき作品なのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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南京条約は国辱と冒頭に字幕で述べられ、ちょび髭はやした林則除は離島で阿片一斉 摘発して海に流す(実話とのこと)、例の夫妻はイギリス人損しないねと中国語で叫び、戦艦呼んで戦争。民兵も「平英団」の旗立てて戦い巡撫戦死、血塗れのハンカチを林に託す。しかし、この辺りは史実と違うらしく、林は早々に左遷させられている由。

阿片描写は価値高かろう。私は具体的なイメージがはじめてできた。冒頭から阿片窟が再現されている。コーヒー一杯千円ほどする喫茶店のような高級な店内、小さめのベッドに半身に寝転び、二人で向かい合わせに一つの灰皿を使っている。我々のイメージする教科書に載っていたような陰気な感じはここではなかった。ただ、白煙はもっと室内に蔓延しただろうに、なぜこの映画的な描写を見送ったのだろう。

話は三人の女を巡るロマンスで、二時間半のうち二時間はこれに使われただろう。林が居候した最初の高官の娘巡撫は、父親の唆しに応じて夜半に部屋の外から林に誘いをかけ、高潔な林に断られたのを恥じて尼寺に入り、ここで阿片の治療薬を広める。林は二つ目の居候先の娘で林の風邪のいい看病をした屏児と結婚する。冒頭に借金のドタバタの播は李香蘭の飴売り娘と一緒になる。

唄われる歌は全部が阿片をやめようという啓発ソング。屏児は♪種が絶え国が亡ぶ怖ろしさ。飴売りの李は強烈で♪歯は真っ黒、口は歪み、背は曲がり、肩は反る、涙と鼻水は止まらない、魂を腐らせる自殺のキセル、捨てて飴をどうぞという飴売りソング。英婦人は激怒して乱闘になり播が助ける。そしてもう一曲は過激に ♪血を泥に替える、その代償の大きいこと。

林は十両出したのに止めそうにない友人の播の「今日は吸って明日から止めるよ」に「今日止めろ、明日という日は永遠にある」と名言を吐く(ふたりは後半、偉くなってから再会するのだが、あのときの十両返せと林は云わなかった。主役だからだろう)。科挙の勉強している林は自らを「読書人」と紹介するのが格好いい。聖なる書物を読んだ節礼を知る男。こういう教養人の尊敬は、例えば現代の日本にはどこにもないものである。

冒頭から登場する阿片商人のイギリス人夫妻は鼻高くする付け鼻つけてコメディアン系。中国では西洋人の悪口で大鼻子(だびつ)というらしい。李を蹴とばす婦人も、戦争でブロックを頭に受けて伸びる亭主も笑わせてくれる。後者はシリアスな戦闘場面にいきなり挿入されてインパクト大。私的ベストショットは部屋から退出した靴先が人の足を踏みつける引きのキャメラアクション。

イギリスは抗日戦争における同盟国で、イギリスの植民地であるビルマから重慶への「援蒋ルート」は中国の戦力を支えていた。中国がイギリスを批難する時代ではなかった。

(評価:★4)

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