[コメント] 紅色娘子軍(1961/中国)
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文化大革命派指導者層に最も推奨された作品(佐藤忠男)の由。罪状が書かれたのだろう円筒形の帽子被らされて集団の晒しもの、さらには吊し上げの暴力を受ける地主の件は、明らかに文化大革命の糾弾で参考にされている。
もうひとつ抵抗があるのが子供への兵役指導で、ラストショットも行進する子供のアップが仰角で捉えられ、それは未来の明るさの象徴のようだった。このフィルム、世界各地のテロ集団に出回っていないだろうか。中国共産党は成功したのだから我々も子供に銃を持たせようと広告に使用されていないだろうか。
舞台は1930年。冒頭の、水に膝まで浸かる牢屋が恐ろしい。主演の祝希娟に仮託されたものは重い。♪ 前進 前進 戦士の責任は重く 婦女の恨は深い と唄われる。その後いくら国家共産主義が馬脚を現しても、この「恨みは深い」というフレーズだけは生々しく残るのだろう。
共産党の居留地は解放区と呼ばれ、結団式での彼女等の宣誓は「国民軍を倒せ」「土地改革、封建制打破」。入隊に当たっては「無産階級か(土地を持っていないか)」が尋ねられる。女子軍に入隊しても党員ではない。映画の後半で入党証を書く件がある。終盤は内戦。
祝希娟を山中で救って一緒に軍に参加する向梅。彼女の、等身大の木の人形が夫、とは意味が判らなかった。何かの罰なのか、精神を病んでいたのか。ふたりの「なぜ洪書記は未来が判るの」「共産党員だからよ」なんて会話はプロパガンダでしかないが、20世紀に多くの人が宗教的に信じたフレーズだったのだろう。この狂信は宗教戦争に似ている。
一方、向梅がボソッと呟く「いい人は少ないわ」が本作で一番リアルで、求心力のある科白だった。いい人は少ない。しかしそれなら、女子軍になぜあんなに大勢の応募があるのか。それは娯楽作じみていると感じた。
コロナ禍で100人ぐらい入場のアーカイブで観た。ひとりだけヒステリックに笑い続ける爺さんの他は、殆どの客が冷静に映画を観ていた。誰もがひどい映画だと判っているだろうが、笑いを躊躇させるものも浮かび上がってくるようだった。
それはひとつは、この革命の原因のひとつが大日本帝国であるという史実、もうひとつは、暴力革命を言論として封鎖すべきでないというヴォルテール流の理性だろう。違うだろうか。そして他にもあるだろうか。上映中、反対を向いて客席を見ていたい思いがした。
タイトルは「こうしょくじょうしぐん」と読む。
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