[コメント] 上饒収容所(1951/中国)
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1941年の皖南事変(かんなんじへん)については今でも議論があるらしいが、映画は共産党・国民党どちらが原因とも描いていない。ただ捕虜となった共産党員が行列つくって歩かされている処から始まる。
自分らの入る監獄を造らされる。「お前ら手抜き工事しただろう」と白服の国民軍。「その壁作り直しだ。全員で押して倒せ」とシジフォスみたいなことを云われ、押したらたちまち崩壊。これってやっぱり手抜き工事だったとバラしていて変なユーモアがある。共産党からしたら、バレちまったぜという処なんだろうか。
国民党の収容所の方針は中盤に語られる。共産党員を改心させることが共産党の壊滅に繋がるという見解が示される。ただ、「共産党は負けた。ファシズムのほうが優れているからだ」と、国民党の上官に自らをファシストだと取れるようなフレーズを語らせる件があるが、これは多分やり過ぎだろう。
捕虜を前に国民党側の戦争学者が語る。共産党の抗日のせいで戦争になった。蒋委員長の云う通りにすればいいのだ。抗日を維持すれば中国は負ける。抗日を拡大すると共産党が大きくなって国民党がなくなる。語るに落ちている訳で巧いホンで、ここは笑えた。
太った女看守は鞭をふるい、路上で歩けなくなった者は銃殺され、後ろ手に縄を結わえられて吊るされる光景が再三現れる。鉄線ぐるぐる巻きの狭いスペースに三日間立っていろというすごい拷問。ここは詳述されなかったが、余り見たくもない。残酷なことである。
「血の闘争だ」「我々の血こそが最大の武器だ」♪進め進め 我らは鉄の新四軍。色んな歌が合唱される。生き埋めにされる李華は頭がパンクスだし、銭部長はちょび髭はやしたヤンキーみたい。共産党では強面のキャラが愛されたと思われる。ヤンキー部長が寝返ったという怪文書が流されて一同が動揺する件は吸引力があり、ネット時代のフェイクに半信半疑の心持と変わらない。最後に水死するふたりの娘の件はイマイチで、横たわって銭部長への信頼を語る娘など観客への色仕掛けに見える。
そして1942年、日本軍が攻めてきて国民党の坊主の看守が半狂乱、ここはナイスな展開でコメディが一瞬躍動している。捕虜連れて移動する途中、河を渡った処で新四軍反乱、敵の銃奪って銃撃戦で、丘の上に逃げる。大勢の人が丸山に蝟集して晴れた空を見上げるラストは決め打ちの解放感。
勉強しないと評価しにくい史実が扱われており、台湾の人が観たらどんな感想なんだろうかと気になった。国共内戦を扱った映画は全部そうなんだろうけど。毛沢東の方針がやたら賛美されるのは眉唾かも知れないと思わされる。
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