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[コメント] 洪水の前(1954/仏)

 暗くて、重くて、悲しい。この時代の閉塞感、緊迫感は現代にも通じるものがあるんじゃないでしょうか。
にくじゃが

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 家族の断絶、世界大戦の不安、若者の犯罪、差別問題・・、この映画には本当にたくさんのテーマが詰まっている。詰まりすぎて、ちょっと息苦しい。でもカイヤットはがんばった。武骨すぎて、エンターテイメントとは全く言えない。そうだな〜、マリナ・ヴラディがこれで大人気になったらしいんで、彼女が画面にちょい華やかさとさわやかさを与えた、そのくらいでしょうか。

 この4(5)人は家族の中で、それぞれみんな孤立している。リリアンヌは政治談義で始終対立している父と兄の間に入れない。リシャールの父は何かというとすぐ「ユダヤ人の陰謀だ」と人の話を聞かない。フィリップの母は愛人にべったりで、父は商売に忙しい。ジャンの母は「私が一番息子のことを知っている」と言ってはいるが、息子の話は聞かない。ダニエルの両親は何をしているのだろう?

 子は親の鏡、とはよく言ったね。リシャールとフィリップは他人を信じられない。そりゃ、そうなるよ。親に愛されてない、信頼されてないのに、他人を信じるなんて無理だよ。だって教わってないんだもん。友達同士で信頼し合うのに、殺人事件はちょっとでかすぎる練習だ。よって、二人はもっとも恐ろしいことをやってしまう。ジャンがそうならなかったのはひとえに母親のおかげだろうね。たとえ一方的であったとしても、曲がりなりにも愛情だもの。少年達はリリアンヌを積極的に巻き込みはしなかったけど、もし彼女が中心に入っていたら、どうなるだろう?

 最後もまた、恐ろしい。成長しきってしまった大人は、どうすればいいんだろう?変われそうな人もいるが、「人生をもう一度始めるには、もう遅すぎる」と考える人もいる、さらにはそれにも気付いていない人もいるのだから。

 それと最後に、コメント、点数、ともに一番乗りはちょっと気持ちいいです。でへ。

(評価:★5)

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