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[コメント] オートクチュール(2021/仏)

リナ・クードリナタリー・バイという新旧二人の国際的スター女優を目当てに見る。クードリの造型は、悪態、口の悪さが映画としてのチャームポイントでもあるが、泣き叫びながら母親と怒鳴り合う場面等は、どうにかして欲しいと思いながら見る。
ゑぎ

 ナタリー・バイにも声を荒げる場面はあるけれど、変わらぬ凛とした佇まいが美しい。バイと窓を組み合わせた画面が何度も出て来て、静かに映画の情感を定着する。例えば、職場の大きな窓の側で椅子に座り、タバコを喫うショットを見た瞬間、私は感激して涙が溢れそうになった。窓から建物の入り口にクードリが現れないかを見るショットも複数回。彼女の視線がよく演出されているのだ。あるいは、バイが空を見上げて、飛行機を見る場面が2回。何を想っているのか正解は示されないが(娘のことを想っているのだろうか)、正解なんて示さなくても全然いいのだ。

 全体にプロット展開は、ほとんどファンタジーだと思う。そう感じるプロットはいくつもある。窃盗行為が許容され、逆に食事を奢ってもらえること。手を見ただけで能力が推し量れること。大して努力せずとも仕事がこなせること。同郷(サン=ドニ)出身のカトリーヌの優しさまでファンタジーと云うと云い過ぎだが、移民を嫌う(クードリを針で突く)アンドレのキャラ造型は、一種のファンタジーだと私は思う(作り過ぎという意味で)。また、クードリの母親の変化の描写はどうだろう。しかし、こういう下手に演出すると浮いてしまうようなプロットを、大きな違和感を覚えさせずに展開の中に織り込んでしまう手腕も大したものだろう。

 ちなみに、クードリには入浴シーンと、同僚のアベル−アダム・ベッサとのベッドシーンがあり、『フレンチ・ディスパッチ』の時のようにヌードを披露するかと思って見ていたが、本作ではヌードなし。正直、観客としては、この線引きの基準が分からない(監督が求めたかどうかなのだろうが、そうだとしてもだ)。もう一つ、ちなみに、アダム・ベッサは『モスル〜あるSWAT部隊の戦い〜』で主演を張っていた役者。今後に期待大。

(評価:★3)

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