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[コメント] 信虎(2021/日)

元禄時代の江戸城から始まる。柳沢吉保-柏原収史が、我が子に信虎のことを語る回想形式。信虎-寺田農の登場は、近江の甲賀で兵集めする場面から。この時、80歳だという。
ゑぎ

 こゝから、信虎の死までがメインとなるプロットで、その後の勝頼-荒井敦史の討死、武田家の滅亡、そして信虎の二十三回忌のエピソードが描かれる。まずは冒頭の場面(甲賀の場面)での説明台詞の連発に、かなり心配したのだが、徐々に台詞もこなれて来て安心する。何よりも、主人公、寺田農の見事な貫禄と台詞回し、そして全編通じての美術(orロケ場所)の豪華さには瞠目する。

 カメラワークは、フルショットやウエストショットから、ゆっくり寄っていく、あるいはその逆という画面が多い。ドリーも使うがズームがほとんどだ。ゆっくりしたズームなので余り気にならないが、同じカメラワークはワンパターンに感じ、食傷気味になる。フィクスでいいじゃないか、と思えて来る。カッティングではディゾルブ繋ぎが冒頭から多用される。ズームしながらのディゾルブもある。ディゾルブ繋ぎは、古い映画のような雰囲気が出て、格調高さに奏功している。

 また、思ったよりもアクションシーンは少ない。前半、甲斐への帰国の途中、美濃の関所を突破する場面で銃撃と斬り合いが出てくるが、ちょっと鈍重な見せ方だなぁと思ってしまった。時代考証に忠実なのかも知れないが。あとは、信濃高遠城でのスッパ(忍者)との殺陣シーンと、勝頼が討たれる場面ぐらいか。大がかりな合戦シーンは全くない。長篠の合戦もナレーションのみで処理される。しかし、だから悪い、というワケではなく、例えば信虎と勝頼とが初対面する評定のシーンなんかは会話劇として大した迫力であり、緊張感は全編維持される。

 あと、信虎の娘-谷村美月の存在がいい。中盤、消えてしまうので、中途半端な扱いだと思いながら見ていたが、終盤で取り返し、存在が活きて来る。それと、二人の子役もいい。特に、高遠城の武田逍遥軒(信廉・信玄の弟。『影武者』では山崎努がやった役)-永島敏行の嫡男として出てくる肥満気味の子役が面白い。尚、北斗七星のほくろや妙見の秘術といったスピリチュアルなプロットは、これによって多少面白くはなっているが、あまり、映画としての驚きには機能しない仕掛けだと思う。

#備忘。猿の名前「なこそ」。

(評価:★3)

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