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[コメント] パピチャ 未来へのランウェイ(2019/仏=アルジェリア=ベルギー=カタール)

アルジェリア。1990年代。主人公のネジュマ−リナ・クードリとその親友ワシラが、夜、女子寮を抜け出す場面から始まる。手配していた白タクに乗り込み、車中で化粧と着替えをする。
ゑぎ

 二人でナイトクラブへ向かうのだ。途中、検問に合うのだが、こゝが既にかなり怖いシーンだ。たまたま持っていた布をヒジャブ(頭を覆うスカーフ)の代わりにし、難を逃れる。全編に亘って、ヒジャブはネジュマにとっての、敵(というか、唾棄すべきもの、不自由)の象徴として描かれる。

 また、全編に亘って、非常にきめ細かく、かっちりと作られている。ネジュマの姉リンダの顛末の見せ方(もって行き方)なんかも、よく考えられている。ただし、ネジュマのカットの後景で処理する(彼女に振り返りもさせない)演出は、少し無理があるとは思った。ワンカットで簡潔に示した画面作りだが。

 邦題の副題「未来へのランウェイ」は、ネジュマが企画した女子寮でのファッションショーのことを意味しているのだが、さらに云うとそれは自由の象徴なのだ。中盤以降、ショーの準備に協力的だった恋人との関係の変化、親友との仲たがい、同じ寮生でも原理主義者たちによる妨害、寮母先生の説得等といった、乗り越えるべき障壁が描かれ、本当にショーを開催することができるのか、という命題が焦点となる。しかし、その結末は、少なくも私は、全く予想していなかったものだ。これも凄いと思う。

 エンディングは未来への希望を感じさせるもで、彼女たちなら、力強く生きていくだろうとも思わせるのだが、同時に、その場しのぎの希望ではないのか、という危惧も抱いてしまう。

(評価:★3)

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