[コメント] 黒時計聯隊(1929/米)
また、本作もドアが開くショットから始まる。勿論、『捜索者』がそうだけど、本作に近いところでは『メアリー・オブ・スコットランド』(1936)もそうだった。本作もスコットランド人が主人公。しかもヴィクター・マクラグレンが演じている。
ドアが開き、バグパイプを演奏する兵士たちが映る。タイトルの黒時計連隊がフランスへ進軍する壮行会だ。大佐−ラムスデン・ヘアの挨拶。「アニー・ローリー」や「蛍の光」(オールド・ラング・サイン)が唄われる。大佐の挨拶と「蛍の光」の歌唱はラストでも繰り返される。大尉のマクラグレンもこの連隊のメンバーだが、一人特命を受け、インドへ向かうよう指示されるのだ。なので、連隊のお話は脇筋であり、インドの山岳地帯でのマクラグレンの活動がメインのプロットになる。
まずは、駅での出征シーンが延々と続く兵士たちの行進を映して圧巻だ。このエキストラの員数には驚く。マクラグレンには弟の少尉がおり、兄弟の別れの場面も兼ねる。他にも家族と別れる兵士たちの描写があり、こゝでも「アニー・ローリー」が唄われる。
インドでのマクラグレンの任務は、現地の反乱分子たちの鎮圧、カリスマ的な女性指導者ヤスマニを葬り、彼らの武器を破壊することなのだが、このヤスマニをまだ若い(24歳ぐらいの)マーナ・ロイが演じている、というのも本作の興味深いところだろう。彼女の登場は、ほとんど透明の薄いスカーフを顔にかけた、アップショット。以降ずっと華奢なボディにピッタリした衣装で、特に上半身のラインがはっきり分かる。それは、クララ・ボウやハーロウみたいなセックスシンボルとして売り出されていたということだろう。本人にとっては不本意だったのかも知れないが(後年の知的な淑女のイメージとは大きく異なるから)、しかし本作の彼女の位置づけは2年後のフォード作『人類の戦士』と比べても、ずっと大きいと云えるものだ。
当然ながら(?)、マクラグレンとロイは恋に落ちるのだが、2人のラブシーンでは、ロイが英語が不得意という設定だからか、ゆっくりとした会話シーンになっており、どうにもまだるっこしい。どうも本作のロイへのディレクションは上手くいっていない、ロイもまだ経験不足ということもあるのかも知れないが、応えきれていないように思う。
また、マクラグレンたちのシーンの途中で何度かフランス(フランダース)での黒時計連隊の戦況、戦闘シーンが挿入される。中には、ロイの持つ大きな水晶に、マクラグレンの弟が被弾し倒れる場面が映る、というスピリチュアルなシーンもあるが、短いクロスカッティングでも、欧州大戦の悲惨な戦場がよく演出されていると思った。
あと、マクラグレンの旧知の協力者モハメッド・カーン−ミッチェル・ルイスが、味方に対して行う振る舞いや、階段上から反乱者たちをマシンガンで掃射する場面など、今見ると、いくらなんでも大胆不敵過ぎると思う演出があるが、そういうことを指弾するのは私の目的ではないので、この程度の指摘にとどめよう。
#備忘
・囚われ目をくり抜かれたというマグレガー少佐はフランシス・フォードだ。
・IMDbを見ると、連隊の兵士の中にジョン・ウェインやランドルフ・スコットがエキストラで参加しているらしい。全然見分けがつかなかったが。
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